研究概要 |
複雑系繊維強化複合材料の数値解析による挙動解明においては,有限要素モデル化の困難さと詳細な応力分布を得れる数値シミュレーション手法の開発が課題であった.本研究では,モデル作成の容易さと実際のき裂と対応可能な詳細さの両方を満たすことができる手法の開発を行った.具体的には,母材である樹脂や一方向積層板をモデル化した有限要素モデルに,強化材である強化繊維束の有限要素モデルを重ね合わせ,数値解析の際にそれらを考慮して変形挙動や応力・ひずみを計算する有限要素解析プログラムの開発を行った.また,繊維強化複合材料の周期性を考えて,その単位構造モデルのみを用い,そのモデルの重ね合わせを行いつつ,周期性を考慮した境界条件を適用することにより,積層による等価弾性係数の変化についても評価可能となった.さらに損傷発生による剛性変化についても,座古らの開発した手法を取り込み,複雑内部構造を有する繊維強化複合材料でも提案手法を用いて強度評価が可能となった.この時,精度向上のためには,母材および強化材の要素として適切なサイズと積分点数を有する要素を使用することにより一般の有限要素解析と同等の解を得ることが可能で,かつモデル化の大幅な簡易化が可能であることもわかった。これらのシステムを開発したことにより,織物繊維強化複合材料や縫合繊維強化積層板に代表される複雑系繊維強化複合材料の等価弾性係数や強度値が,数値解析により取得可能となり今後の材料開発での効率化に貢献した。
|