研究概要 |
地球表層部において,土や岩などから構成される地盤に地殻変動のような大規模かつ長期にわたる力学的負荷が作用した場合,地盤中の間隙流体の移動と地盤の変形挙動との連成複合現象が生起する.こうした地質学的スケールの現象の中で形成される地質構造の形成メカニズムの解明は,どのようなプロセスを経て現在ある地質構造に至ったのかを知るのみならず,われわれが生活する地球表層部が,将来,どのように変遷していくのかを予知する上でも,重要な役割を担う課題である.本研究は,地質構造,その中でも主に断層にスポットを当て,その形成過程を地盤が経験する破壊現象と捉え,初期値・境界値問題として扱い,数値解析を通してその形成メカニズムを定量的,かつ具体的に評価することを目的としている.ここで研究対象とする断層の場合,断層帯あるいは破砕帯と呼ばれる局所変形が卓越した領域での材料の特性変化の考慮が重要となる.本研究ではまず,限界状態理論に基づきAversa et al.(1998)が実験的に示した破砕性堆積岩のダイレイタンシー特性のモデル化を行っている.すなわち,破砕履歴に伴う降伏曲面の形状変化を考慮し,大野ら(2006)による地盤材料の弾塑性構成モデルを拡張した.これにより,種々の拘束圧下での破砕性堆積岩のダイレイタンシー挙動,あるいは破砕履歴による降伏特性を,より忠実に再現できるようになった.次いで,Hashiguchi and Tsutsumi(2001)による接線応力速度効果を構成関係に導入し,非排水条件および,平均有効応力一定・平面応力条件下でのせん断帯生成条件について,解析的検討をおこなった.また,上記の構成モデルを有限要素プログラムに組み込み,非排水条件および,平面応力条件下での横ずれ断層のシミュレーションを実施した.
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