研究概要 |
燃料電池用高分散合金触媒の合成は、通常高温(〜800℃)熱処理による合金化が主流である。しかし、この手法では、(1)、一粒子ごとの金属組成が不均一になること、(2)、熱処理による粒子の凝集を導き、これらが電極触媒劣化の原因の一つとして懸念されている。そこで本研究では、高温熱処理を必要とせず、任意な金属組成、粒子サイズが制御可能なナノカプセル法によって合成した合金触媒の酸素還元活性および耐久性評価を行った。合成した触媒は組成の異なるPt_3Co/C, Pt_2Co/C, PtCo/C及びPtCr/Cの4触媒であり、いずれも平均粒子径は約2nmである。耐久試験は70℃、空気雰囲気の0.5M H_2SO_4溶液中で触媒を浸漬撹拌することで、触媒の形状、組成変化等を観察することで評価した。浸漬時間は24h及び312hとした。耐久試験後の粒径分布を測定し、試験前と比較した結果、初期値から24h 後にはPtCo/Cでは約1nm増大が確認された。Ptの割合が増加するほど粒径増加は抑制された。試験後の溶液をICP測定によって分析し、溶解金属量を見積もった。耐久試験前のCo含有量(atom%)は、PtCo/Cで46.5、Pt_2Co/Cで33.6、Pt_3Co/CBで24.8であった。浸漬時間24h後にはそれぞれ20.2, 19.6, 18.4 atom%、312h後には17.3, 51.7, 14.5 atom%であった。またPt_3Co/C のORR比活性は純Pt/C触媒の2.3倍、質量活性は3倍となり、高耐久性を有する低Pt触媒調製の指針を得ることができた。このことは燃料電池のコスト削減と実用化に向けた耐久性の観点で非常に有意義な情報となる。
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