本研究は草資源による良質で安全な牛肉生産に適応したウシの体質形成プログラムの構築を目指し、初期成長期の代謝生理的刷り込み効果を解明することを目的とした。牛群を幼少期(初期成長期)のみ異なる飼養環境で飼育し、その後は放牧による草資源(粗飼料)により肥育したウシ骨格筋内における結合組織成分(コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、デコリン等)に関連する遺伝子群の発現をバイオプシーサンプルにより経時的にモニターし、そのような遺伝子群の発現が初期成長期の栄養環境の違いによってどのように変化するのかを追跡する計画を立てた。 平成19年度は、黒毛和種2〜10カ月齢に濃厚飼料を多給し、その後は乾草のみで飼養した牛群(7頭;C区)と、2カ月齢以降乾草のみで飼養した牛群(7頭;R区)を用いた。26カ月齢で屠殺し、第12〜13胸椎位から胸最長筋を採材した。筋材料は液体窒素により凍結し、酵素組織化学的な方法により、筋線維型構成を算出し、合わせて筋線維直径を測定した。屠殺時の体重は、C区で471.9±42.3kg、R区で357.4±25.5kg(P<0.05)だった。胸最長筋の筋線維型構成は、両区の間でI型、IIA型およびIIB型で差異は認められなかった。また、筋線維直径は、I型、IIA型およびIIB型でC区の方が太かった。 また、肉質に関連した結合組織因子としてコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、デコリンなどのタンパク質の骨格筋中での構造的な相互関係を把握するために、免疫組織化学染色と共焦点レーザー顕微鏡を用いた3次完立体再構築像を画像解析により作成し、個々の結合組織成分の構造的特徴を観察する方法を開発した。
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