研究概要 |
小型肝細胞は成熟肝細胞中に約2%存在し,クローナルに増殖する肝細胞である。小型肝細胞は一定条件下で分化(成熟化)することから肝前駆細胞であると考えられる。本研究では肝前駆細胞の発生及び分化機序を解析することを目的とした。D-Galactosamine(GalN)投与による肝障害ラット肝臓より,申請者が明らかにした小型肝細胞マーカー;CD44及び他の肝前駆細胞(オーバル細胞)マーカー;Thy1を用いて細胞を単離,培養した。GalN投与後2日目から分離したThy1細胞は上皮細胞コロニーをほとんど形成しなかったが,3日目から分離したThy1陽性細胞の中からCD44陽性小型肝細胞コロニーが出現した。この結果は,Thy1陽性細胞の一部に肝幹細胞としての能力を持っ細胞がいて,CD44陽性小型肝細胞を介して肝細胞へ分化することを示している。また,投与後3日目から単離したThy1陽性オーバル細胞をデキサメサゾン-/HGF+の培養液を用い,コラーゲンゲル中で30日間培養すると管腔構造を形成し,腔壁には微絨毛を持った胆管であることがわかった。以上の結果からThy1陽性オーバル細胞はin vitroで肝細胞及び胆管上皮細胞に分化可能であった。また,肝細胞分裂を抑制するアルカロイドの一種Retrorsineを投与後,肝細胞増殖刺激(2/3部分肝切除)を与えたモデルラット(Ret/PH)にThy1陽性及びCD44陽性細胞を移植し,生体内での分化を調べた。GalN投与後3日目から分離したThy1陽性細胞も,4日目から分離したCD44陽性細胞も共にRecipientの肝臓内で増殖巣を形成した。この結果は,これらの細胞の中に肝細胞へ分化可能な細胞が存在することを示している。これらのことからThy1陽性オーバル細胞はCD44陽性小型肝細胞を介して成熟肝細胞に分化することがわかった。
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