研究概要 |
PlGF(胎盤由来増殖因子)は,VEGFファミリーに分類されるサイトカインであり,毛細血管新生作用だけでなく動脈新生作用も有している.我々は従来から継続している研究成績から,急性心筋梗塞に対するPlGF投与が心機能および生命予後を改善する治療的応用が可能であるとの仮説をたてた.今回の検討では,分子生物学的手法を用いてPlGFおよびその阻害蛋白であるsFlt-1(可溶性Flt-1)のリコンビナント蛋白を作成して心筋梗塞モデル動物に投与することにより,1)PlGFの外因性投与が梗塞後の心機能および生命予後に及ぼす影響,2)予後改善効果におけるPlGFの血管新生・動脈新生作用の寄与,3)外因性PlGF投与が骨髄由来Flt-1陽性細胞細胞の末梢血への遊走,および梗塞部心筋へのhomingに及ぼす影響,4)骨髄由来Flt-1陽性細胞の心臓内で血管新生に対する関与,5)外因性sFlt-1投与の単独あるいはPlGFとの同時投与が心筋梗塞後の病態に及ぼす影響を検討した.本研究の成績から,急性心筋梗塞時に内因性に増加するPlGFは梗塞後の病態に治癒的に寄与すること,さらに外因性にPlGFを投与することによってその効果が増強されることが明らかとなった.PlGFが急性心筋梗塞の急性期の治療法の一つになる可能性が示唆される.
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