研究概要 |
Herpes simplex virus(HSV)のマスト細胞への感染性 我々はマウス胎児皮膚由来マスト細胞(FSMC)を用いて,HSVがFSMCに感染するかを検討した。HSV2(186株)をMOI 100でFSMCに接触させ24時間後に,蛍光抗体法により26%のFSMCにHSV感染を認めた。 HSV感染におけるマスト細胞の役割 さらに,HSV感染により,FSMCのTNF-α,IL-6,MIP-1α,MIP-2の産生が抑制され,LPS刺激を加えることにより,さらに顕著に抑制された。一方,熱処理したHSVでは,これらの産生に影響を及ぼさなかった。 Annexin V binding assayとTUNEL assayを用いた検討では,HSVはMOI依存性にFSMCのアポトーシスを誘導した。一方で熱処理したHSVでは,アポトーシスは誘導されなかった。さらに,ウイルスの複製を阻害するphosphonoacetic acid(PAA)で処理するとアポトーシスが阻害され,HSVによるFSMCのアポトーシスにウイルスの複製が関与していることが示唆された。 以上より,HSV感染によりFSMCのアポトーシスが誘導され,サイトカインやケモカインの産生が抑制されることがわかった。マスト細胞は,局所の炎症反応を減弱させ,ウイルスに対する獲得免疫の誘導を抑制し,感染を遷延化させている可能性がある。 マスト細胞に対するオステオポンチン(OPN)の役割 また我々はFSMCにおいて,OPNの発現が認められることを発見した。また,OPNによりFSMCの遊走を促進し,IgEを介する脱顆粒を増強することを明らかにした。またin vivoにおいても,OPNノックアウトマウスではIgEを介する脱顆粒が抑制されていることが分かった。このことは生体内の皮膚マスト細胞においても,OPNがアレルギー反応や自然免疫を促進させている可能性を示唆している。
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