研究概要 |
まず健常群マウス海馬においてドパミンにより自発性GABA作動性後シナプス電流がどのように影響を受けるか調べた。ラットを使用したわれわれの以前の報告では誘発性GABA作動性シナプス電流はドパミンにより抑制を受け,その効果はより幼若であるほど強かった。しかし,今回自発性GABA作動性後シナプス電流に対してドパミンは頻度を増加させ,その効果は発達にしたがってさらに強まることが明らかになった。また,その効果は濃度依存性であった。 ドパミン受容体にはD1とD2グループの受容体があるが,前回のわれわれの報告ではphosphatidylinositol-linked D1受容体を介して誘発性GABA作動性シナプス電流は抑制されたが,今回の自発性GABA作動性シナプス後電流に対してもD1受容体が関わっている可能性が示唆された。D2agonistには増強効果はなく,D2antagonistでは増強効果をブロックできなかった。D1antagonistにてドパミッによる増強効果は阻止することができ,PLCinhibitorであるU73122にても部分的に増強効果をブロックすることができた。一方,PKAinhibitorであるH-89では増強効果をブロックすることができなかった。AgonistでのD1かD2のsubtypeに対しての検討が十分でないが,今回の自発性GABA作動性後シナプス電流に対してのドパミッの効果はやはりPI-linked D1受容体を介しての効果であると考えている。また実際にc-clamp recordingを用いて介在ニューロンに直接興奮性を調べると,ドパミン投与後に発火頻度が上がることが観察できており,自発性GABA性後電流がドパミンにより増加するのは介在ニューロンの興奮性を上げることによるものであると推察された。
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