研究概要 |
1.臨床使用されているオピオイドの新生児脳における低酸素・虚血への影響 臨床でのprospective randomized controlled studyは倫理上不可能であるため,新生児ラットの低酸素・虚血モデルを用いて,モルヒネ腹腔内投与が脳保護的に作用するのか,それとも脳傷害を悪化させるのかについて検討した。虚血後単回投与の場合,1mg/kg群,2.5mg/kg群ともに脳傷害の程度は生食群と有意な差はみられなかった。さらにAlzet osmotic minipumpを用いて塩酸モルヒネ1,2.5,10mg/kg/hr72時間投与という長期投与が与える影響についても検討した。10mg/kg/hr群で体重増加が有意に少なかったが,CA1,CA3,dentate gyrus領域における生存神経細胞数については生食群と差がなかった。一般的に臨床で新生児や乳児に持続投与されているモルヒネについては,明らかな神経傷害増悪作用はなく,安全に使用できる可能性が初めて示された。 2.δオピオイドの新生児脳における保護効果の有無について In vitroでは神経保護作用を有するとされるδオピオイド(DADLE)が新生児ラットの低酸素・虚血モデルにおいて神経保護作用を発揮するかを検討した。CA1,CA3領域では神経保護効果は見られなかった。 一方で,10mg/kg投与群は生食群や1mg/kg群と比較してdentate gyrus領域のみ神経細胞数が有意に少なかった。血液ガス上は投与量が多いほど高二酸化炭素血症を認めるものの酸素化には有意差がなかった。 以上より,明らかな神経保護作用がないこと,さらにDADLE投与はむしろ脳傷害を悪化させる可能性があることが示唆された。
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