研究概要 |
生後10〜12週齢の雌ハートレイ系モルモットを用いて、ケタミンとキシラジンの筋注にて全身麻酔後、側頭骨内顔面神経を露出し、マイクロ持針器にて10分圧迫することにより側頭骨内顔面神経麻痺モデルを作製した。圧迫のみを行ったものを圧迫群とし、圧迫後、顔面神経上にbFGF(100μg)水溶液を単回投与したものをbFGF群とした。また、圧迫後にbFGF(100μg)含有のゼラチンハイドロゲルを留置したものをbFGF含有ゼラチンハイドロゲル群とした。 圧迫処置後6週目に麻痺の肉眼的評価、神経伝達速度の測定を行った。麻痺の治癒評価には眼瞼、鼻翼、口角の3部位を用い、ほぼ正常に動くものを2点、部分麻痺を1点、高度麻痺を0点としてそれぞれ採点し、その合計で評価した。圧迫群では1.3±0.9点,bFGF群は1.1±0.6点であった。一方,bFGF含有ハイドロゲル群は3.1±0.8点であり,他の2群と比べ有意な麻痺の早期治癒傾向を認めた。また電気生理学的検討として側頭骨外顔面神経の10mm離れた2点を刺激し、口輪筋で誘発筋電位を記録した。2点間の距離10mmを中枢側、末梢側それぞれの潜時の差で除算することにより神経伝達速度を求めた。圧迫群では11.8±3.Om/sec,bFGF群は11.0±2.8m/sec,bFGF含有ハイドロゲル群(n=8)は17.3±2.7m/secであった。bFGF含有ハイドロゲル群は圧迫群,bFGF群に比べると,有意に速度が速く神経の再生が良好であったと考えられた。 今後は組織学的検討も併せて行っていく予定である。
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