研究課題
若手研究(B)
昨年度では、二相性リン酸カルシウム(低結晶性炭酸アパタイト-炭酸カルシウム)人工骨置換材を調製し、さらに生体内を模擬した環境で二相性骨置換材のカルシウム溶出を測定した。今年度は骨髄細胞を用いた骨形成能評価、及び破骨細胞を用いた骨置換材吸収性の評価を行った。1. 骨髄細胞を用いた骨形成能評価 :4週齢のラット骨髄細胞を用いて、異なるリン酸塩処理時間によって作られた二相性リン酸カルシウム骨置換材(それぞれ12時間、1日、3日、5日リン酸塩処理)及び対照群の炭酸アパタイト試料の上で培養し、早期細胞接着、細胞増殖を検討した。さらに同骨髄細胞を試料の上で14日培養し、Real Time RT-PCR遺伝子発現定量法を用いて、osteo-pontin、BMP-2、osteocalcinなどの骨分化マーカーのmRNA発現レベルを検討した。その結果、リン酸塩処理時間が長いほど(炭酸カルシウム含有量が減少していく)、骨髄細胞接着率および細胞増殖率が高くなる傾向は認められた。骨分化マーカーのosteopontin、osteocalcinにおいては、すべての試料にはほぼ同程度のmRNA発現量を示した。BMP-2においては、1日リン酸塩処理した試料は他の試料より高いmRNA発現量を示した。2. 破骨細胞を用いた骨置換材吸収性の評価 :生後4日のラット骨髄細胞を用いて、二相性リン酸カルシウム骨置換材及び炭酸アパタイト試料の上で培養した。その後、TRAP染色を用いて、破骨細胞分化能力を検討した。また四日間培養後の試料表面を操作型電子顕微鏡(SEM)で観察し、破骨細胞による骨吸収性について検討した。TRAP染色において、二相性リン酸カルシウム及び炭酸アパタイト試料表面にTRAP陽性、つまり破骨細胞が確認された。SEM観察において、すべての試料表面に破骨細胞による吸収窩が確認された。リン酸塩処理時間(炭酸カルシウム含有量)の影響については、さらなる定量評価が必要と考えている。以上の結果から、二相性リン酸カルシウム骨置換材は炭酸アパタイトと同様に破骨細胞による吸収性を有し、炭酸アパタイトと同程度、或いはそれ以上の骨分化能を示している。