【目的】本研究はサービスがおよびにくい人の保健医療福祉へのアクセスを高める住民ネットワーク機能を明らかにし、その評価指標を作成することである。 【方法】(1) 項目収集と精選:既存文献からソーシャルキャピタルに基づいた住民ネットワーク評価に関する内容を抽出し、専門家(保健師経験のある学識者)から意見収集後に修正し、項目の精選し31項目の評価指標試案を作成した。(2) 質問紙調査:評価指標案として作成した内容について、全国調査を行い信頼性・妥当性を確認した。調査の対象施設は、全国から無作為抽出した保健所・保健センターおよび地域包括支援センター1215箇所で勤務する保健師3365名である。調査時期は、2010年2月~3月である。 【結果】アンケートの回収数は1150(回収率36.1%)であった。回答者の平均年齢は40.6歳(標準偏差10.3歳)であった。まず、住民ネットワーク評価指標案(31項目)について、項目分析を実施した。その後、因子分析を行った。その結果、26項目5下位因子からなるネットワーク尺度が作成された。住民ネットワーク評価指標の下位因子は、5つあった。それらは「住民とのつながり」(8項目)、「ネットワークの土壌」(6項目)、「専門職との繋がり」(4項目)、「住民の集いの場や機会」(3項目)、「地域住民同士の助け合いや情報交換」(5項目)であった。評価指標のCronbachα係数は0.903であり、高い信頼性が確保された。作成した評価指標と、対象者の主観的なネットワーク構築状況(10段階)とは有意な相関があった(相関係数0.58)。また主観的な当該地域からの対象発見の状況とも有意な相関があった(相関係数0.38)。 【考察】本研究で作成した「住民ネットワーク尺度」は、地域の住民からアクセスを高めるネットワークを評価する指標として使用可能であることが示唆された。今後、この「住民ネットワーク尺度」を保健センターや地域包括支援センターで地域のネットワーク機能を評価するために使用し、住民のアクセスを高めるためにネットワークを構築していくができる。今後、さらなる活用可能性について検証していくことが必要である
|