研究概要 |
本研究の目的は,吃音の原因のひとつと考えられる聴覚フィードバック機構の障害を,医工学的検査や神経科学的な手法に基づいて定量的に評価し,非吃音者における流暢性および吃音者における非流暢性の神経基盤を明らかにすることである. 非吃音者においては発話の非流暢性を引き起こし,吃音者においてはむしろ治療効果を示す遅延聴覚性フィードバックを用いて発声の非流暢性を定量的に分析した.以下に本科学研究費によって行われた研究の主な成果を示す. (1)-(1)聴覚フィードバックによる発話のピッチ調節は発声方法によって変化する. (1)-(2)吃音者では発声の基本周波数の上昇によってピッチ調節量が大きくなるのに対し,吃音者では聴覚フィードバックに対する感受性が低くほとんど調節量が大きくならない. (2)-(1)遅延聴覚フィードバックによって発声音長が延長する. (2)-(2)遅延聴覚フィードバックの開ループ特性の分析により,発話が自動的に聴覚フィードバックに対し同期する「引き込み現象」が観測された. 本研究の結果は聴覚フィードバックが発声の流暢性,非流暢性に重要な役割を果たしていることを示しており,吃音者の非流暢性の神経基盤を調べる上で非常に重要な基礎的知見である.
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