研究概要 |
理論言語学の視点から,モーダル形式と主語名詞句の人称制限の現象を用いて,以下のことを主張した。(1)日本語の主語名詞句統語的位置は,英語のそれとは異なり,時制辞Tの指定部とは限らない。(2)日本語の「が」格主語は,時制辞Tよりも構造的に高い,A'位置からの認可を受けている。この主張(1)-(2)に対し,言語喪失現象からのさらなる検証を試みた。結果は,(3)上記(1)に関してはブローカ失語の被験者は,Miyagawa(2001)の主張する2つのタイプのscrambling構文において,生成能力に差があった。これは、派生の異なる2つのscramblingが存在することを示し,その帰結として主語は、vP内にも存在することを示すことになる。(4)上記(2)に関しては,時制辞Tより構造的に高いA'位置の関与を仮定した,「が」格付与能力とA'-scramblingの生成能力には,顕著な相関は今回の調査では見られなかった。
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