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「新しい公共」論の系譜学:官僚制の政治理論

研究課題

研究課題/領域番号 19830072
研究種目

若手研究(スタートアップ)

配分区分補助金
研究分野 政治学
研究機関岐阜大学 (2008)
早稲田大学 (2007)

研究代表者

野口 雅弘  岐阜大学, 教育学部, 准教授 (50453973)

研究期間 (年度) 2007 – 2008
研究課題ステータス 完了 (2008年度)
配分額 *注記
2,760千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 360千円)
2008年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2007年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
キーワード新しい公共 / 官僚制 / ウェーバー / 『儒教と道教』 / アーレント / カフカ / 協働 / 儒教と道教 / トクヴィル / オッフェ / マックス・ウェーバー / ハンナ・アレント / 公共性 / セキュリティー / 脱政治化 / DDR
研究概要

「ウェーバー的な官僚制論」といわれるものは、マートンの逆機能など、多くの批判を受けてはきたが、それでも官僚制論の基本とされてきた。それは、大規模組織に、多くの構成員を包摂し、彼らをきびしく規律化することで成り立ち、そうして達成された効率性ゆえに拡大を続ける「鉄の檻」という官僚制理解である。しかしこれは、グローバル化と新自由主義化の傾向において「リキッド・モダニティ」(バウマン)がいわれるなかで、大きな修正を求められている。
ところが、「官から民へ」、「小さな政府」、住民との〈協働〉(「新しい公共」論)などの、近年の官僚制をめぐる議論では、旧来の官僚制理解を前提にしつつ、「大きすぎ」で、「抑圧的」な官僚制を攻撃するという論法がしばしば使われている。
本研究は、こうした状況に対して、政治理論の古典文献を再読解することを通じて応答しようとする試みであり、その成果は、以下の二つのテーゼにまとめることができる。ひとつは、「脱政治化された秩序」と官僚制の相関性であり、いまひとつは、官僚制とアソシエーションのジレンマである。
前者の「脱政治化」とは、政治的な抗争関係が顕在化しないように作用する言説を問題化しようとするタームである。政治的な抗争が封印されると、現状において自明視されている「慣習」が批判的に検討され、熟慮され、そうして変容するという可能性が閉ざされてしまう。このような「脱政治化」は、ある意味での経済的「合理性」を一元的に貫徹しようとする新自由主義から調和的な秩序構想のなかで政治的コンフリクトの契機を根絶しようとする儒教システムにまで見いだすことができる。
以上のような観点からすると、官僚制的な組織が「小さく」なったとしても、それで問題が解決するわけではなく、さまざまな政治的抗争が政治のシーンから見えにくくなることにともなう問題があることが見えてくる。本研究は、ウェーバーの『儒教と道教』を「脱政治化された秩序」の分析の書として受け止め、そこにおける官僚制支配の機制を検討した。
後者の観点(官僚制とアソシエーションのジレンマ)からすると、(抑圧的で、画一的な)官僚制という「悪」に対して(自発的な)アソシエーションという「善」が対抗するという思考では、自由なアソシエーション、あるいは〈民〉の活動によって(何らかの形で保持されるべき)「普遍性」が底割れするという連関を見落としかねないということになる。
たしかにマルクスのヘーゲル批判にあるように、官僚制による「普遍性」の僭称にともなう問題も大きいし、実際「日本官僚制」批判ではこの側面が強調される十分な理由があった。しかし、今日、〈官〉の縮小のなかで別の問題状況が出てきている。こうしたなか、ウェーバーのアメリカ論を、官僚制とアソシエーションのジレンマを引き受けながら思考しようとした議論として検討することは重要になってきている。

報告書

(3件)
  • 2008 実績報告書   研究成果報告書 ( PDF )
  • 2007 実績報告書
  • 研究成果

    (26件)

すべて 2009 2008 2007

すべて 雑誌論文 (9件) 学会発表 (9件) 図書 (8件)

  • [雑誌論文] 比較の理由--ウェーバー『儒教と道教』再読2009

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 雑誌名

      創文 520(刊行予定)

    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [雑誌論文] 一次資料から迫るウェーバーのナショナリズム--今野元『マックス・ヴェーバー--ある西欧派ドイツ・ナショナリストの生涯』2008

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 雑誌名

      思想

      ページ: 52-60

    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [雑誌論文] デマゴーグ以後--マックス・ウェーバーと脱政治化の問題2008

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 雑誌名

      現代思想

      ページ: 86-97

    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [雑誌論文] (書評)一次資料から迫るウェーバーのナショナリズム-今野元『マックス・ヴェーバ-ある西欧派ドイツ・ナショナリストの生涯2008

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 雑誌名

      思想

      ページ: 52-60

    • NAID

      40016151976

    • 関連する報告書
      2008 実績報告書
  • [雑誌論文] デマゴーグ以後-マックス・ウェーバーと脱政治化の問題2008

    • 著者名/発表者名
      野口 雅弘
    • 雑誌名

      現代思想 vol.36-1

      ページ: 86-97

    • 関連する報告書
      2007 実績報告書
  • [雑誌論文] 近代から文化へ--冷戦の終焉以後のマックス・ウェーバー2007

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 雑誌名

      創文 503

      ページ: 11-14

    • NAID

      40015801345

    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [雑誌論文] 信条倫理化する<保守>--ウェーバーとマンハイムを手がかりにして2007

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 雑誌名

      現代思想 (臨時増刊)

      ページ: 118-133

    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [雑誌論文] 信条倫理化する〈保守〉-ウェーバーとマンハイムを手がかりにして2007

    • 著者名/発表者名
      野口 雅弘
    • 雑誌名

      現代思想 vol.35-15

      ページ: 118-133

    • 関連する報告書
      2007 実績報告書
  • [雑誌論文] 近代から文化へ-冷戦の終焉以後のマックス・ウェーバー2007

    • 著者名/発表者名
      野口 雅弘
    • 雑誌名

      創文 503号

      ページ: 11-14

    • NAID

      40015801345

    • 関連する報告書
      2007 実績報告書
  • [学会発表] クリストル・ベル・シュトラウスIrving Kristol, Daniel Bell, Leo Strauss--ネオコン知識人研究のための予備的考察2009

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 学会等名
      大阪大学グローバルCOEワークショップ
    • 発表場所
      法政大学市ヶ谷キャンパス
    • 年月日
      2009-03-21
    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [学会発表] クリストル・ペル・シュトラウスIrving Kristol, Daniel Bell, Leo Strauss--ネオコン知識人研究のための予備的考察2009

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 学会等名
      大阪大学グローバルCOEワークショップ「1989/90年の転換期と知識人」
    • 発表場所
      法政大学市ヶ谷キャンパス
    • 年月日
      2009-03-21
    • 関連する報告書
      2008 実績報告書
  • [学会発表] 『儒教とピューリタニズム』再考--ウェーバーにとって比較とは?2009

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 学会等名
      第2回「マックス・ヴェーバー研究会」
    • 発表場所
      東洋大学
    • 年月日
      2009-03-15
    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [学会発表] 『儒教とピューリタニズム』再考-ウェーバーにとって比較とは?2009

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 学会等名
      第2回「マックス・ヴェーバー研究会21」
    • 発表場所
      東洋大学
    • 年月日
      2009-03-15
    • 関連する報告書
      2008 実績報告書
  • [学会発表] マックス・ウェーバーの学問論--大学のアメリカ化と知識人の『責任』、2008

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 学会等名
      東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学研究センター」(UTCP)、公開共同研究「哲学と大学」第5回
    • 発表場所
      東京大学駒場キャンパス
    • 年月日
      2008-07-03
    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [学会発表] マックス・ウェーバーの学問論-大学のアメリカ化と知識人の『責任』2008

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 学会等名
      東京大学グローバルCOE 「共生のための国際哲学研究センター」(UTCP)、公開共同研究「哲学と大学」第5回
    • 発表場所
      東京大学駒場キャンパス
    • 年月日
      2008-07-03
    • 関連する報告書
      2008 実績報告書
  • [学会発表] 『小さな政府』と<協働>の時代における官僚制をマックス・ウェーバーから考える2008

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 学会等名
      早稲田大学政治経済学術院ファカルティワークショップ
    • 発表場所
      早稲田大学
    • 年月日
      2008-04-30
    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [学会発表] 『小さな政府』と〈協働〉の時代における官僚制をマックス・ウェーバーから考える2008

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 学会等名
      早稲田大学政治経済学術院フアカルテイワークシヨツプ
    • 発表場所
      早稲田大学
    • 年月日
      2008-04-30
    • 関連する報告書
      2008 実績報告書
  • [学会発表] 『闘争と文化』をめぐって2007

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 学会等名
      思想史研究会
    • 発表場所
      成蹊大学
    • 年月日
      2007-04-28
    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [図書] 「デモクラシー」『現代政治理論』飯島昇藏, 佐藤正志, 太田義器(編)2009

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 出版者
      おうふう
    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [図書] 「比較と責任--マックス・ウェーバーの学問論」『哲学と大学--近代の哲学的大学論の系譜学と人文知の未来』(西山雄二, 宮崎裕助(編))2009

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 出版者
      未來社
    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [図書] アメリカの省察--トクヴィル・ウェーバー・アドルノ2009

    • 著者名/発表者名
      クラウス・オッフェ(野口雅弘訳)
    • 出版者
      法政大学出版局
    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [図書] アメリカの省察ートクヴイル・ウェーバー・アドルノ2009

    • 著者名/発表者名
      クラウス・オッフェ(野口雅弘訳)
    • 総ページ数
      192
    • 出版者
      法政大学出版局
    • 関連する報告書
      2008 実績報告書
  • [図書] 「比較と責任-マックス・ウェーバーの学問論」西山雄二、宮崎裕助編『哲学と大学-近代の哲学的大学論の系譜学と人文知の未来』2009

    • 著者名/発表者名
      西山雄二
    • 出版者
      未来社
    • 関連する報告書
      2008 実績報告書
  • [図書] 「官僚制(マックス・ウェーバー)」『はじめて学ぶ政治学』(岡崎晴輝, 木村俊道(編))2008

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書
  • [図書] はじめて学ぶ政治学2008

    • 著者名/発表者名
      岡崎 晴輝、木村 俊道
    • 総ページ数
      325
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • 関連する報告書
      2007 実績報告書
  • [図書] 「合理性と悪」『悪と正義の政治理論』(太田義器, 谷澤正嗣(編))2007

    • 著者名/発表者名
      野口雅弘
    • 出版者
      ナカニシヤ出版
    • 関連する報告書
      2008 研究成果報告書

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公開日: 2007-04-01   更新日: 2016-04-21  

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