研究概要 |
炭酸塩鉱物は天然に最も多く存在する鉱物の一つであり,炭酸塩鉱物の生成とその堆積物中への保存は地球表層環境におけるCO_2の挙動に影響を与える最も重要な地球科学プロセスの一つである。カルシウム炭酸塩鉱物の一つとしてモノハイドロカルサイト(CaCO_3・H_2O:以後MHC)が存在する。MHCは準安定鉱物であり,乾燥条件では数年間変化しないが,高温の水中に存在するとカルサイトやアラゴナイトへ短時間で相変化する。したがって,MHCは炭素循環に関わるような地球科学的研究対象となる保存期間を持たないと考えられ,その生成や安定性はほとんど検討されてさていない。一方報告者らはモンゴルに位置する古代湖のフブスグル湖において20万年前の堆積物中からMHCの存在を見出した。この発見はMHCがこれまで考えられてきた以上に安定であり,特定の環境条件でMHCが地球表層環境におけるCO_2の挙動に重要な役割を果たす可能性を示唆している。そこで本研究では室内実験からMHCの生成条件や安定性を評価することを目的とし,これまで定量的な検討のなされていないMHCの生成におよぼすMg^<2+>の影響,準安定相の理解に必須となる低温(10〜50℃)におけるMHCの変質挙動とその速度について検討を行った。その結果,MHCの生成には母液のMg/Ca比が0.3以上を必要とすることが認められた。またpH11の溶液条件において,MHCの結晶相への相変化は結晶相の核形成と結晶成長の二つのプロセスに特徴づけられ,それぞれのプロセスの活性化エネルギーは114.5kJ/mol,61.2kJ/molと見積もられた。
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