研究概要 |
本年度は,単層カーボンナノチューブ(SWNT)の発光イメージング装置の立ち上げと,偏光に依存するSWNTの光学応答の詳細の検討を行った.まず,フォトルミネッセンス,ラマン分光による空間・波長領域でのイメージングを行うため,ピエゾ微動ステージ,近赤外・可視顕微分光光学系の選定を行い,制御プログラムの開発を含めた測定系構築に取り組んだ.また,それに付随して,マクロスコーピックな偏光励起分光測定系に関しても波長可変レーザーを用いた高感度測定系を構築した.上記の測定系を用いて,これまでブロードバンド低出力光源による測定では観測不可能であったSWNT軸垂直偏光による励起に伴う吸収ピークエネルギーのカイラリティ依存性を観測し,そのファミリーパターンが軸垂直励起ピークの起源の解釈(第一サブバンドと第2サブバンド間の遷移(E_l2もしくはE_21)によるものという解釈)と矛盾しないことを示した.具体的には,SWNTの電子構造を反映して,E_12(E_21)のカイラリティ依存性が軸平行励起に対する光学遷移であるE_llとE_22のカイラリティ依存性と密接に関連付けられるということを示した.さらに,従来測定にかからなかった軸垂直励起に対する新たな吸収ピークの観測を行い,それらのピークの起源について検討を行った.さらに,軸垂直励起エネルギーのSWNT周辺環境依存性(環境効果)についての検討により,軸垂直励起エネルギーの環境効果による変化の程度は反電場効果により大きく変化することが期待されるのに対して,実際には軸平行励起エネルギーの変化と同程度であることが明らかとなった.また,SWNTの合成に関しては,超高真空チャンバーとターボ分子ポンプを用いた低リーク高真空CVD装置を構築し,よりよく制御された環境下でSWNT合成が可能なことを確認した.
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