研究概要 |
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は、ヒトに敗血症などを引き起こす薬剤耐性菌として、世界的に注目される。VREが出現した原因として、畜産環境における抗生物質の多用が指摘されており、畜産環境からの検出報告も実際にある。本研究では、バクテリオファージを用いて、畜産環境中のVREを防除することを目的として、本年度はバクテリオファージの単離と溶菌能力の評価を行った。 まず、臨床由来株Enterococcus faeciumを東北大学大学院医学研究科より入手した。各耐性遺伝子特異的プライマー(vanA, vanB, vanC)を用いてコロニーPCRを行った結果、同株がvanA保有型のバンコマイシン耐性腸球菌であることを確認した。東北大学大学院農学研究科附属フィールド教育研究センター内から環境試料として、牛ふん101試料、牛ふん堆積場の液汁2試料、堆積コンポスト1試料、側溝の水1試料、ラグーン水1試料を採取し、これをバクテリオファージ分離源としてプラークアッセイを行い、同分離株を溶菌できるバクテリオファージの単離を探索した。これにより、プラーク形状が異なる2種類のバクテリオファージ(A、B株)を単離した。透過電子顕微鏡による観察により、A、B株の形状は類似しており、頭部は多面体様の構造を持ち、その直径は150nm前後、尾部の長さは50nm前後であった。尾部繊維は両者とも認められなかった。600nmの波長の吸光度測定により、A、B株のVRE株の増殖阻害を評価した結果、両株とも10^5個の添加で、VREの増殖は抑えられた。さらに、10^8個のファージを添加することにより、10^3〜10^4 cells/ml程度のVREを3時間以内にほぼ溶菌した。したがって、本研究で単離したVRE溶菌性バクテリオファージがVRE殺滅に有効であることが示された。
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