研究概要 |
今回の研究では, 多発性硬化症(MS)における神経栄養因子の関与に関して検討した.はじめに, BDNF遺伝子のexon5に存在するG196A多型を216名のMS患者と186名の健常者で比較したが, 2群間でgenotypeやallele frequencyに差は認めなかった.一方, 血清中のBDNF濃度を, 多発性硬化症患者の再発期・寛解期, 対照健常者の3群で比較検討したが, 有意な差は認めなかった.MSの再発予防としてインターフェロンベータ製剤が使用されるが, in vitroの実験などからこの薬剤が神経栄養因子に影響を与えることが示唆されており, 今回MS患者においてインターフェロンベータ使用群と非使用群において血清中のBDNF濃度を比較検討したが, 2群間で差を認めなかった.MSの進行の程度の指標であるMultiple Sclerosis Severity Scale(MSSS)と血清BDNF濃度との相関も認めなかった.今回の検討では, BDNFとMSの有意な関連を示唆するデータは得られなかったが, これまでの研究から神経栄養因子はMSの病態に深く関わっていることが示唆されており, 他の神経栄養因子を含め今後も研究を継続する予定である.
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