研究概要 |
これまでの諸家の報告と総合して、現時点での老人性難聴の原因遺伝子として可能性が高いのはNAT2A, GRHL2, GST, KCNQ4遺伝子であると考えた。これらの候補遺伝子の解析から開始することにした。 KCNQ4遺伝子は内耳有毛細胞に発現するカリウムチャンネルで、その遺伝子変異により高音中心に障害される感音難聴をきたす。老人性難聴もそのほとんどは高音から障害されてくるため、KCNQ4遺伝子変異は老人性難聴に関与している可能性が高い。 KCNQ4遺伝子は14のエクソンからなる。各エクソンを挟んでPCR増幅し、アガローズゲルに電気泳動し、紫外線下に確認して該当するPCR増幅産物を切り出した。切り出したPCR増幅産物は精製し、蛍光標識したM13プライマー(及び逆鎖のプライマー)でサイクルシークエンスして蛍光自動シークエンサーで解析することにした。 14のエクソンの内エクソン1、8は通常の酵素およびバッファーではPCR増幅困難で、PCRの条件設定に時間を要した。エクソン1はGCrich条件下用のバッファー(タカラ)とnested PCRにて増幅可能になった。エクソン8については、インビトロジェンのPCR enhancerバッファー使用にてPCR増幅可能になった。以上、正常検体にてPCR条件を検討し、解析可能になったので解析対象の難聴者について検討した。 KCNQ4遺伝子変異による難聴は、その内耳における分布特性より、高音が特異的に障害され聴力検査上はいわゆる高音急墜型を示すことが多い。これまで当科を受診し聴力経過を見ていた難聴患者の中で、高音急墜を示す者4名、高音漸傾を示す者3名について、定められた書式によって同意を得た上で遺伝子解析目的に末梢血を採取し、KCNQ4遺伝子を解析することにした(次年度以降)。
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