研究概要 |
T管(Transverse tubules)は心室筋及び骨格筋細胞に見られる細胞膜が管状に陥入したものであり,この構造上のCa^<2+>代謝装置が協調して働くことにより,興奮収縮連関をすばやく一様に起こすことが可能となる。心室筋細胞のT管は生理学的に非常に重要な役割を担っているが,その形成・維持の分子メカニズムについては不明な点が多い。本研究ではこの分子機構を明らかにすることを目的として以下の実験を行った。 初めに,細胞膜染色色素であるdi-8-ANEPPS,細胞膜非透過性色素であるAlexa Fluor 647-dextranを用いて,成長に伴う心室筋細胞の形態変化を観察した。その結果,生後1日にはT管が見られないが,生後13日には不規則な管の形成がはじまり,生後29日ではほぼ規則的で完全なT管が形成されることが明らかになった。これらの結果からラット心室筋細胞のT管構造は,生後まもなくは存在せず,生後2週間付近から形成され始め,生後1ケ月でほぼ完成することが明らかになった。 次に,T管形成に重要であると考えられるアンフィフィジン2(amp2)について検討を行った。これまでの報告では,骨格筋由来amp2による管状構造の形成に,エクソン10が重要な役割を果たすことが示されている。しかし心室筋細胞にどのようなamp2アイソフォームが発現しているかは知られていない。これを明らかにするために,ラット心室筋細胞を用いてRT-PCRを行った。その結果心室筋にはエクソン10を持たないアイソフォームが優先的に発現していることが明らかになった。更にこれら二つのアイソフォームによる管形成能の違いを調べた結果,心臓型amp2はそれ単独では管状構造物を形成できないことが明らかになった。これらの結果から,心室筋と骨格筋に発現するamp2は異なる役割を果たす可能性が示唆された。
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