研究概要 |
研究計画初年度である平成19年度では、単離尿細管という極微量試料を用いた網羅的遺伝子発現解析の手法を確立した。また、シスプラチン投与による尿細管障害モデルおよびGFR低下モデルを作成した。平成20年度には腎障害モデルラットにおける単離尿細管遺伝子発現プロファイルの構築と尿細管由来の腎障害メディエイターの探索へと進展できると考える。 (1)単離尿細管を用いた遺伝子発現プロファイルの構築と評価 ラット腎臓より近位尿細管20mmを単離し、DIGラベルcRNAを7-10ug作成した。DNAアレイ解析にはGenome Survey MicroarrayRを用い、尿細管遺伝子発現プロファイルを構築した。シグナル/ノイズ比3.0以上を基準として全27,000遺伝子のうち約10,000遺伝子が検出され、本実験系により単離尿細管の網羅的遺伝子発現解析が可能であることが示された。さらに、近位尿細管上皮細胞に発現することが報告されているSlc22a1,5,8のシグナルは単離尿細管を用いることでwhole kidneyと比べ有意に強く、単離尿細管遺伝子発現解析の有用性が明らかになった。 (2)腎機能障害モデルラットの作成 シスプラチンの腎特異的な毒性発現機構として、近位尿細管特異的に発現する有機カチオントランスポータOCT2が規定因子となることを明らかにした。さらに、2mg/kgのシスプラチン投与によりKim-1の発現および尿中NAG活性の上昇をきたす尿細管障害モデルを、10mg/kgのシスプラチン投与によりGFR低下をきたす腎機能障害モデルを作成できることを示した。
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