就職氷河期から一転し、就職戦線はバブル期に匹敵する売り手市場で活況を帯びている。高卒労働市場においても求人倍率の点からは同じく好況には違いないが、高校教育が産業界を支える質の高い人材を輩出しているのかという点については等閑視されてきた。本研究ではまず近年の高校教育を取り巻く状況について、学校・生徒・社会のそれぞれの視点より文献に基づき分析をおこない現状認識を深めた。 つぎに高卒労働者の質について評価する指標づくりとして、全国1020の事業所高卒採用人事担当者を対象に「高校生の採用と企業が求める教育像に関する調査」を郵送法にておこなった。調査は「採用時に重視したポイント」と「企業が高校教育に望む教育活動」の2つから構成し企業側の視点による高卒採用の実態について迫った。その結果、高等教育機関への進学率の上昇や学力低下を主因に、企業の高卒採用は決して順調に進んでおらず、「人手は足らないし、質も確保できない」という高卒労働市場が危機的な状況にあることがわかった。詳細については「専門高校と企業との接続に関する研究」(『教職教育研究-教職教育研究センター紀要』、関西学院大学教職教育研究センター、第13号、2008年3月)に小論としてまとめた。 さらに、そうした状況を打開するためにはどういった方策が必要であるか。その手かがりを探るため「新規高卒若年社員(事務職以外)における職場適応に関する調査」を全国139の事業所高卒採用人事担当者を対象におこなった。内容は「社内研修の内容」と「早期離職の要因」を中心に構成し、就職後の高卒生の課題について考察を深めた。 以上2つの調査結果に基づき、専門高校でのキャリア教育を企業との接続の観点から検討し、産業界を支える専門高校のあり方について明らかにした。
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