研究概要 |
1研究目的 高校地学の地質分野の学習においては野外実習が重要なものとなる.しかし,市街地に立地する学校,あるいは夜間定時制高校においてはその実施が非常に困難な状況にある.そのような野外実習の実施が困難な状況にある学校においても,室内で野外実習を実施したのと同等の効果の得られる教材の開発と,作成した教材を用いた授業の展開例を考えることを目的に本研究に取り組んだ. 2研究の方法 (1)地層モデルの製作 野外実習の最大の目標は,実物の地層や岩石を直接教材として学習に用いることであると考え,実物の地層を採集し、実験室の中に持ち込むことを第一に考えた.また,単に実物の地層を持ち込むだけにとどまらず,その地層を用いて,地層の対比・ルートマップの作成,地質図の作成などが行えるよう,地層は可動式の架台に設置し,地層の高さ・傾斜・走行を任意に設定できるよう工夫した.また,架台に設置する地層は数種類用意し,目的に応じた地層を架台に取り付けることができるようにした. (2)授業展開 生徒は実験室の数箇所に設置した地層モデルの柱状図を作成する.また,地層モデルの位置を,仮想地形図に示し,柱状図をもとに地層の対比を行う.さらに,仮想地図上でルートマップを作成し,簡単な地質図を作成することまでを一連の授業の中で行った. 3研究成果 生徒たちは前述した内容に加え,実物の地層から走行・傾斜を測定し,化石の産状や堆積構造を観察することができた.また,実験室という目視可能な空間に地層が分散されていることから,鍵層の追跡も容易であり,実習の中で地層の広がりについても認識できたものと考えられる.初めて地層を観察する者にとって,地層の空間認識という観点で考えれば効果的な教材といえよう.なお,本研究の実績を,地学教育学会誌"地学教育"に投稿すべく,現在論文を執筆中である.
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