研究目的:これまで太陽以外の恒星のまわりに250個以上の惑星(系外惑星)が発見されている。系外惑星の発見は惑星系形成の様子を解明するための一助となる。系外惑星の発見方法にトランジット法がある。トランジット法とは系外惑星がその主星を掩蔽するときに起こる主星のわずかな減光を検出する方法である。この方法による観測は特別な機材は必要とせず、アマチュア天文家も実施可能である。そこで自ら観測システムを構築し、系外惑星観測を行うとともに、アマチュア天文家向けの系外惑星研究会を開催し、トランジット法による系外惑星探しを通じた新たなる天文文化の普及を行うことを目的とした。 研究方法と成果:観測システムの構築のため、使用しなくなった望遠鏡とCCDを貰い受け、改修を行った。当初、観測用ドームの故障が発生し、設置場所を改めて探す状況となったが、幸いにも美星天文台公園内に別の観測場所を設けることができた。観測は、すばる望遠鏡で系外惑星観測を行っている研究グループから有力な系外惑星候補天体の情報を得て、その情報を元に観測を行えるようになり、予定していた観測システムを構築することができた。その後、目標天体を精度良く追尾するためのガイドシステムの導入や望遠鏡の振動を抑える工夫を行っている。ただし、新たな系外惑星の検出には至っていない。またアマチュア天文家向けの研究会を7月21日に美星天文台で開催した。研究会には、全国から20名の参加者があり、私を含め5名の講演者により、系外惑星検出の方法、観測報告といった内容の講演が行われた。参加者の中には定年退職後に天体観測を始めようとしている方もおり、新たな天文文化の普及の第一歩を踏み出せたのではないかと考えている。研究会の様子は天文雑誌「星ナビ10月号、アストロアーツ社」や一般科学書「宇宙は"地球"であふれている、技術評論社」で取り上げられている。
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