研究目的: 風力発電における風力タービンの発電出力は風速の3乗に比例する。そのため、発電施設は風況の良好な地点を的確に、かつピンポイントに選定することが重要である。また、流れの衝突、剥離、再付着、逆流などの地形効果を考慮しなくてはならない。このようなニーズに対応するため、本研究は複雑地形上の風況特性の把握に特化した高精度気流計測システムの構築を目的とした。 研究方法および研究成果: 本研究の気流計測システムは風洞実験により構築した。計測用の速度センサにはスプリットフィルムプローブを用い、2チャンネルの流速計と二乗器を組み合わせた。その出力はフィルタ、アンプ処理を行い、A/D変換してパソコンに取り込んだ。スプリットフィルムプローブの2つのセンサ出力の和と差から、流れの大きさ(スカラー風速)と方向が計測可能となる。 計測精度の向上のためにプローブ出力の正確な校正法を検討した。本研究ではプローブ角度の可変装置を製作し、プローブ角度と風速を様々に変化させて出力を取り込む方式とした。 本研究で構築した計測システムの精度検証のために単純地形(2次充尾根モデル)を過ぎる流れ場を対象とした風洞実験および数値シミュレーションを行った。実験においては流れの可視化や、従来からの計測法であるワイヤープローブを用いた方式と、本システムによる気流の速度計測行った。同時に風洞実験と同一条件で数値シミュレーションを実施した。これらの結果を比較して本システムの精度を評価した。本研究で構築したスプリットフィルムプローブを用いた気流計測では、ワイヤープローブでは確認できなかったモデル下流における逆流や、流れの剥離、再付着など複雑乱流場の挙動が精度よく再現され、同時に数値シミュレーションの結果とも良好な一致を示し、その計測精度が確認された。
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