研究概要 |
本研究では,初学者でも使いやすく詳細な動作も理解しやすいことを目的としたVLIWプロセッサシミュレーション環境の開発と,その評価を行った.本研究で実装したシミュレーション環境は次のような特徴を持つ.1)現在,一般に利用可能なものがない,初心者向けのVLIWプロセッサシミュレーション環境とした.2)初学者にとって操作しやすい環境とするために,Microsoft社のWindows XP/Vista上で動作するものとした.3)プロセッサの各レジスタの値や,キャッシュヒット・ミス,パイプライン,メモリアクセスの状態などを,グラフィカルユーザインタフェースを用いてわかりやすく表示するものとした.4)命令セットは,スーパースカラプロセッサシミュレータの実質的な標準となっているSimple Scalar Tool Setで使用されているPISA(Portable Instruction Set Architecture)命令セットをベースにVLIW用の拡張を施したものとし,他のスーパースカラプロセッサとの動作比較を容易にした. 実装においては,まず既に開発済みのLinux版のシミュレータをWindows上への移植をおこなった.Linux版ではネイティブシステムコールを用いてシミュレートしている部分をいかにWindows上で実装するかが問題であった.本シミュレータでは,Windows用のLinux APIエミュレーションライブラリのCygwinを利用し,このファンクションコールを呼び出すためのスタブDLLを開発することにより解決した.また,シミュレーションエンジンもDLLコンポーネントとして設計し,GUIとCUIの2種類のユーザーインターフェースから操作を行えるように工夫をしたとともに,今後の拡張性を確保した。さらにユーザビリティテストを重ねることにより,数種のデザインの中から,より理解しやすいダイアログレイアウトなどを採用し実装した。
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