機械系の学科では物理学の基礎から金属材料・機械加工・機械制御など多様な関連分野を学習している。また、電子系の学科では回路・プログラムなどの科目が一般的に行われる。一方、生活の中で利用される民生機器は、その多くが電子制御されているが、これら機器の電子制御は、多様な技術が集まった複合技術の上に成り立ち、機械系や電子系の学生からは専門外の知識が多く必要とされ、具体的な装置を用いての制御を学ぶことは少ない。そこで本研究では機械系・電子系の両学科の中間に位置する機器として、エンジン制御を対象とした電子制御の基礎を学習できる教材開発を目的とする。 研究では、一般的な自動車のエンジン制御の手法を調査し、専用の電子制御ユニットを開発することで、これを用いた電子制御の学習システムを開発するという手法をとった。電子制御ユニットはルネサステクノロジーのH8マイコンを使用し、プログラムはGCCの統合環境により開発を行った。また、実習装置は小排気量の自動車ガソリンエンジンを使用し、補記類も含め、装置単体で学習できる実習装置を製作することとした。 この研究により、軽自動車のエンジンを用いたエンジン制御実習装置を製作した。実習装置は、エンジン本体、冷却装置、排気装置、燃料供給装置で構成され、電子制御ユニットによりコントロールされる。この実習装置により、学生は他分野の技術にふれながら、複合技術として機器の電子制御を学習することが可能となった。機械系の学生はガソリンエンジンをただの内燃機関として学習するだけでなく、実際の自動車に近い形で、電子制御のプロセスから理解することができる。また、電子系の学生は、卓上で小型モータを駆動するだけのこれまでの制御の学習から、実用の機器に近い形で制御対象を意識した、製品開発に近い形での学習が可能となった。
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