1、研究目的:近年の自然環境への関心の高まりから鉛を含有しないいわゆる鉛フリーはんだが電子部品のマイクロ接合に使用されている。しかし、鉛フリーはんだは本質的に濡れが悪く、リフトオフ、界面剥離、凝固割れ、ボイド、金属間化合物などの接合欠陥を生じ易い。そこで、本研究はつい最近になって使用され始めたPVD-Au-Sn鉛フリーはんだ/Auメタライジングの接合技術の最適化試験を行った。 2、研究方法:接合層の力学に関する評価試験に九州大学応用力学研究所の全国共同利用装置MTS万能試験機を使用した。組織観察と組成分析には同じくEPMA装置を使用した。また、構造解析に中央分析センターの学内共同利用装置XRDを使用した。 3、明らかにされた成果:(1)Au-Sn鉛フリーはんだのAuとSnは別々の蒸発源から同時に蒸った。(2)最適な条件で接合された接合層に変形、界面剥離、凝固割れ、ボイド、金属問化合物の異常成長などは観察されなかった。(3)接合層のせん断破壊応力τの平均値は165(130-200)MPaであった。この値はAu-20%Sn合金の引張強度σの約57%である。せん断/引張りの破壊強さの関係はトレスカ(Tresca)やミーゼス(von Mises)の条件を満たしている。したがって接合層がAu-Sn合金の本来の強度で接合されているのが分かった。(4)接合層に反応形成されている金属間化合物はAu_5SnとAuSnの二種類で、共晶から離れたAuSn_やAuSn_4は形成されないのが分かった。
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