不撹乱試料のサンプリングは、原位置の状態で行われるのが理想である。しかし、理想に近いサンプリングを目指すほど技術的に難易度は高まり、当然ながら経費も高くなる傾向にある。 地盤工学の情報を損なうことなく、性質の異なる幅広い地盤からの不撹乱試料採取と、運搬・成形・試料押し抜き等、土質試験に至る一連の過程で受ける複雑な応力を最小限に留められる、採取地盤に適合したサンプラーの試作と、採取試料押出しの際に発生する摩擦抵抗の軽減が期待できる、簡単なサンプラー押出し装置の開発・試作を行った。 先ず、軟弱粘土から普通粘土の地盤まで対応可能なサンプラーとして、既存のシンウォール製パイプを利用して作成した。サンプラーの上部にステンレス製のガイドを、下部にはガイドカッターを各々装着し、試作したサンプラー押出し装置で土中に押込む形式とした。 また、硬質粘土地盤用のサンプラーとして、押込む際に発生する摩擦抵抗を、大幅軽減が見込まれる釘押込み式サンプラーを考案した。このサンプラーは、押込み装置と組み合わせることで、偏心することなく、円滑に釘を円柱状に押込むことが可能となる様、釘の径や本数などについても工夫を凝らした。 この他に、試料運搬時に発生する試料の亀裂や撹乱、あるいは抜き取り時の撹乱を防止するため、アクリル製の二つ割モールドと、クッション材を用いて作成した養生運搬用箱も併せて考案した。 これまでの不撹乱試料の採取は、採取者の経験や熟練度によって大きな影響を受けていたが、開発・試作した押出し装置と二種類のサンプラーを併用することで、この影響の度合いが大幅に改善され、多種多様な地盤から、原位置の状態を保持しているとみなせる高品質な不撹乱試料の採取が可能となった。 また、装置自体が軽量で持ち運びが容易であり、取り扱いが簡単という特徴を併せ持っているため、災害現場の調査などに適した装置が出来上がった。
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