【背景】口腔癌治療における化学療法や放射線療法により発症する口腔粘膜炎は、治療の継続に大きく影響する有害事象の一つである。当院歯科では、口腔粘膜炎に対して院内製剤アズノール含嗽水(0.006%アズレンスルホン酸ナトリウム-0〜0.24%リドカイン-生理食塩水溶液)を使用しているが、これまでに同製剤の安定性や微生物学的安全性についての報告はない。 【目的】照度および温度が0.006%アズレンスルホン酸ナトリウム-生理食塩水溶液(AG)および0.006%アズレンスルホン酸ナトリウム-0.08%リドカイン-生理食塩水溶液(ALG)中のアズレンスルホン酸ナトリウム(sodium azulene sulfonate、以下SAS)の残存率とpHの変化に与える影響を指標に製剤の安定性と微生物学的安全性を考慮した保存方法について検討を行った。 【方法】AGおよびALGを、温度(4℃、25℃、37℃、室温)、照度(遮光、500ルクス、1000ルクス、室内散光)の各条件下において保存し、経時的(調製直後、3日、7日または14日後)にSASの吸収極大の波長(570nm)における吸光度およびpHを測定した。SASの残存率は、調製直後の吸光度の値を100%として算出した。微生物学的安全性の検討は、第十五改正日本薬局方一般試験法微生物限度試験法生菌数試験カンテン平板混釈法に準じて行った。 【結果・考察】同製剤の安定性および微生物学的安全性についての検討の結果、室内散光下・4℃で保存する場合は調製後7日間の使用が可能であり、遮光下・4℃で保存する場合は、調製後14日間の使用が可能であることが明らかとなった。 本研究において、AGおよびALGの安定性を示し、適切な保存方法を確立した。今後は、他の施設においても本製剤の安心・安全な導入が可能となり、より広範な患者のQOL向上の一翼を担うことが期待される。
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