研究概要 |
ティーエスワン(TS-1;大鵬薬品工業株式会社)は経口抗腫瘍薬であり,現在,臨床において胃癌,結腸・直腸癌,非小細胞肺癌,頭頸部癌,乳癌などに幅広く使用されている.TS-1は5-FUのプロドラックであるtegafur(FT)に,5-FUの分解経路における律速酵素の可逆的な拮抗阻害剤であるgimeracil(CDHP)と消化管に特異的に分布し,5-FUのリン酸化酵素を可逆的に拮抗阻害して消化器毒性を抑制するoteracil potassium(Oxo)という2つのモジュレーターを配合した経口抗腫瘍薬である. インタビューフォームによると,TS-1を食後に投与した場合と空腹時に投与した場合では,FTとCDHPの吸収に差はほとんどなかったが,Oxoの吸収が顕著に変化すると記載されている.そのため,もしTS-1を空腹時に服用した場合,Oxoのバイオアベイラビリティーが上昇し,血中及び腫瘍内で5-FUのリン酸化が抑制されて抗腫瘍効果が減弱する可能性があることから,添付文書中には,「食後に服用」と記載されている.抗悪性腫瘍薬の治療を受けている人々の中には,様々な理由からなかなか満足に食事を摂れない人も存在しているにも関わらず,空腹時に服用した場合の抗腫瘍効果の変化についての検討は現在されていない.そこで,TS-1を空腹時に服用した場合の抗腫瘍効果の変化についてのラットを用いて検討を行った. 5週齢の雄性ドンリュウ系ラットの背部皮下に2×10^4個の吉田肉腫細胞(LY-336)を移植した。移植後、1日12時間食餌を与え、残りの12時間を絶食とした。絶食時間終了後にTS-1を投与する群を空腹時投与群とし、食餌を12時間与えた後にTS-1を投与する群を食後投与群とした。20mg/kg/dayのTS-1を経ロゾンデにて投与した。2週間後に移植した吉田肉腫を摘出し、2群における重量比較を行ったが、食後投与群、空腹時投与群ともに大きな差は認められなかった
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