研究概要 |
【背景】免疫抑制剤タクロリムスは、その体内動態において個体間、個体内変動が大きいこと、併用薬との薬物相互作用が知られており、血中濃度モニタリングはタクロリムスの適正使用において必須である。また、タクロリムスは血液中では赤血球画分に高濃度に分布していることが知られている(赤血球:血漿=98:2)。薬効と相関があるのは遊離型タクロリムスと平衡状態にある血漿中濃度であると考えられるが、臨床的には主として全血中のタクロリムス濃度の測定が行われている。一方、薬物トランスポーターは赤血球にも発現しており、その発現量や活性の個体差はタクロリムスの赤血球・血漿分布比に大きく影響を与えると考えられるが詳細を調べた報告はない。本研究はタクロリムスを基質とする赤血球膜上に発現している薬物トランスポーターを同定することを目的とする。【方法】はじめに網状赤血球からmRNAを調整しRT-PCR法により赤血球に発現している薬物トランスポーターの解析を行うこととした。ヒト全血中から網状赤血球を分離する手法として、OptiPrep(Axis-Shield社)を用いた密度勾配遠心法(Inaba N, et. al.,2003)とPercoll(GE Helthcare社)を用いた密度勾配遠心法(Pawar VB & Prabhu A,1991)を検討した。分画した細胞はニューメチレンブルーを用いた超生体染色法にて観察した。【結果・考察】今回は、いずれの密度勾配遠心法においても、ある程度網状赤血球の割合を増加させることができたが、白血球の混在を排除することができなかった。今後は、Polymorphprep(Axis-Shield社)を用い全血から白血球を分離した後に、網状赤血球を濃縮する2段階の密度勾配遠心法を検討し、網状赤血球の単離法を確立すると共に、タクロリムスを基質する薬物トランスポーターの同定を目指す予定である。
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