研究概要 |
【研究目的】 小児造血肝細胞移植前処置における静注用ブスルファン(BU)の母集団薬物体内動態(PPK)パラメータの算出および静注用BU添付文書記載の小児投与量の妥当性の検証を目的に検討を行った。 【研究方法】 平成20年3月31日までに静注用BUのTDMを行った小児患者22名(4ケ月〜13歳、月齢中央値9.5ケ月、体重中央値7.6kg)を対象とし、前処置プロトコールによる投与(本投与)の1回目および本投与開始1週間前の試験投与後に多回採血(4〜5点)を行い、患者固有のクリアランス(CL)を算出、至適血中濃度が得られるように投与量を調節した。このようにして得られた総数172点の採血データを用い、非線形混合効果モデル(NONMEM)により母集団薬物動態パラメータを算出した。 【研究成果】 年齢(AGE)および体重(WT)を考慮したNONMEM解析よりCL=1.43×(AGE/9.5)^<0.564>、Vd=5.14×(1+0.137×(WT-7.6))を得た。個体間変動はそれぞれ21、17%、個体内・残差変動は13%であった。本結果とこれまでに我々が算出した経口BUのPPKパラメータ(Ther Drug Monit32:75-83,2008)との比較より、経口投与製剤のバイオアベイラビリティーは低年齢時に低値であり、成長と共に増大することが示唆された。また、静注用BUの添付文書記載の小児投与量は体重毎で細かく規定されているが、9kg未満の患者に対して添付文書記載の1mg/kgで投与した場合、有効濃度域(600〜900ng/mL)となると予測された症例は約半数(7/15)に過ぎず、多くの患者(5/15)で本濃度域を超過するとの予測となった。今後、更に症例を収集し、年齢、体重以外の影響因子も考慮したPPKパラメータを算出し、ベイジアン解析による少数点採血での投与設計法を確立する予定である。
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