【目的】大腸がん治療では高用量の抗悪性腫瘍薬5-フルオロウラシル(5-FU)を用いた持続注入療法(FOLFOX、FOLFIRI)が標準治療とされており、外来がん化学療法では、インフューザーポンプを用いての持続投与が行われている。一方、5-FU注はガラスアンプル製剤であり、かつ低用量規格品のみの販売であるため、薬液調製時には十数アンプルのカットを必要とし、輸液中にガラス片異物が混入する危険性が極めて高い。本研究では、5-FU薬液調製時のガラス片異物発生状況を調査するとともに、フィルター使用の必要性を検討した。 【方法】経験年数が異なる薬剤師16名を対象に、光遮へい型自動微粒子測定装置にて、アンプルカット試験および異物発生状況調査を実施し、薬液中不溶性微粒子の粒子径および粒子数を測定した。フィルターの性能評価には、ポリスチレン製標準ビーズを用いた。 【成果】5-FU注アンプルカット直後の薬液中には、不溶性微粒子が存在した。粒子径25μm以上の粒子数は、薬剤師間で有意な差がみられ、さらに経時的な薬液中粒子数の減少ならびにアンプル底部での沈降粒子数の増大が観察されことから、アンプルカットによりガラス片が発生していることが示された。一方、5μm以下の粒子に関しては、全ての薬剤師にて多く検出されたが、日本薬局方第13局の定める不溶性微粒子数の限度数を考慮した場合、製造販売されたアンプル製剤には一定の不溶性微粒子(粒子径10μm未満)の存在が許容されていることから、製剤由来の粒子が存在する可能性も示唆された。さらに、注射筒に吸引した際に増加する粒子においては、ガラス片のみならず、注射筒由来のシリコンや気泡の影響が考えられた。従って、ガラス片由来の異物除去には、5μmのフィルター使用が有効であるが、一方で、製剤由来やシリコン等の異物除去には0.8μmのフィルター使用が必要であることが示された。
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