研究概要 |
【研究目的】 HMG-CoA還元酵素阻害薬のスタチンは、高脂血症治療薬として汎用されているが、副作用として横紋筋融解症を誘発する。一方、細胞外ATPはP2受容体を介して細胞内Ca^<2+>濃度を上昇させ、多彩な生理作用を示すことが報告されている。また、細胞障害時には細胞外にATPが漏出する事も知られている。本研究では、スタチン誘発骨格筋障害時に細胞外へのATP漏出が認められるのか。さらに、骨格筋に存在するP2受容体mRNA発現量に対してスタチンは影響を与えるのかを検討した。 【研究方法】 ラット骨格筋(短指屈筋)を摘出し、コラゲナーゼ処理で得た単一骨格筋繊維を電気刺激(2Hz,5msec,10V,50秒間)した。細胞外ATP濃度は、ルシフェリン・ルシフェラーゼ法で測定した。トリパンブルー染色で骨格筋繊維の障害程度を観察した。P2受容体mRNA発現量は、摘出した骨格筋からRNAを抽出しリアルタイムRT-PCR法を用いて行った。スタチン処理は、摘出した骨格筋または単一骨格筋繊維の培養液にフルバスタチン(10μM)を加え72時間行った。また、対照にはフルバスタチン非存在群を用いた。 【研究成果】 電気刺激による収縮反応で細胞外へのATP漏出が認められた(0.9±0.9fmole/cell)。スタチン群では、収縮反応によるATP漏出が約31倍増加(27.9±11.6fmole/cell)し、有意差(Mann-Whitney検定、P<0.01)が認められた。P2受容体mRNA発現は、P2X4,P2Y1,P2Y2,P2Y4,P2Y6およびP2Y12が認められた。スタチン群では、P2X4 mRNAの発現が約1/40に強く抑制された。以上のことより、スタチン誘発骨格筋傷害時には、細胞外にATPが漏出し易くなるとともにP2受容体mRNA発現量に変化が認められたが、その役割については詳細な検討が必要である。
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