研究概要 |
本研究の目的は尿中ジアセチルスペルミン検査およびPET-CT検査を比較することにより,尿中ジアセチルスペルミン(DiAcSpm)測定による早期悪性腫瘍スクリーニングシステムを構築することである. 三重大学医学部附属病院,済生会松阪総合病院みえPETがん診断センター,塩川病院において,PET-CT健診受診者476名の尿を用いて尿中DiAcSpm測定を実施した. 健常ボランティアと健診にて明らかな疾患を認めなかった健常人合計369名の尿検体を解析した.尿中DiAcSpm濃度は小児および女性で有意に高値を示したため,健常成人を対象に男女別に基準値を設定した(男性253nmol/g・cre、女性350nmol/g・cre).この基準値を用いて判定した結果,PET-CTがん検診受診者におけるDiAcSpm陽性者数は28件(5.9%)であった.現在までに,PET-CT健診で悪性腫瘍が見つかった症例は7例(1.5%)であり,うちDiAcSpm陽性症例は3例であった.さらに,ELISA競合法を用いた尿中DiAcSpm濃度とPET検査におけるSUVにはr=0.826と良好な相関関係を認めたため,尿中DiAcSpm濃度と腫瘍細胞内へのグルコース移行との関連が示唆された.健常ボランティア10人から求めた尿中DiAcSpmの個体内変動は16.9%,個体間変動は44.5%であった.個体内変動に比べ個体間変動が大きく,病的な変動が生じていても初期には基準範囲内となる可能性がある.尿中DiAcSpm測定による悪性腫瘍の早期発見には,個人における有意な変化を捉える判定基準が必要と考える.なお,尿中DiAcSpm濃度は上皮性悪性腫瘍と同様,造血器腫瘍や骨肉腫などの非上皮性悪性腫瘍(肉腫)においても陽性率が高く有用な腫瘍マーカーになる可能性があることも確認した.
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