研究概要 |
(緒言)純Tiと歯科用Co-Cr合金のレーザー溶接強度は非常に弱く,口腔内での使用は不可能である.この原因は,TiとCoの状態図から判断されるように溶融部に金属間化合物が生成し,溶解凝固部に亀裂が発生するためである.しかし,純Tiと純Pdのレーザー溶接部は他の純金属より高い溶接強度を示し,また,PdとCoおよびCrの状態図にはほとんど金属間化合物は生成しない.そこで,純Tiに純Pdをレーザー溶接し,余剰部分を削除した後,歯科用Co-Cr合金とレーザー溶接した試験体の剪断試験を行い興味ある結果を得た。 (方法)サンドブラスト処理された純Tiブロック(10×10×20mm)に純Pdをレーザー溶接し,余剰部を削除後,歯科用Co-Cr合金棒をレーザー溶接した.この時の条件はTiブロックにサンドブラスト処理のみ(条件(1)),また,純Pdワイヤーをレーザー溶接した揚合(条件(2)),さらに純Pdワイヤーで肉盛溶接を施した場合(条件(3))の3種類とした.各条件5個の試験体を製作し,万能材料試験機インストロンで剪断試験を行った.(結果,考察)条件(1)は非常に低く平均1.64Kgfであった.また,条件(2)は平均4.75Kgfで,多少の上昇が認められた.また,条件(3)は,平均41.84Kgfを示し,条件(1)の約25.5倍,条件(2)の約8.8倍の剪断強度を示した.また,統計分析の結果,各条件間に危険率1%で有意差が認められた. TiとCoの状態図から多くの組成において金属間化合物を生成する.このためTiとCoの合金には亀裂等が発生し,そのため条件(1)のレーザー溶接強度は弱かったと考えられる.また,TiとPdおよびCoとPdの状態図には金属間化合物の発生が少なく溶接強度が得られたものと考えられる. (結論)Tiブロックと歯科用Co-Cr合金のレーザー溶接部の剪断試験の結果,次の結論を得た. 1)条件(1)の剪断強度は非常に弱かった. 2)条件(2)は僅かに増加した. 3)条件(3)は大幅に向上した. 純Tiに歯科用Co-Cr合金をレーザー溶接する場合,純Pdワイヤーを純Ti側にレーザー溶接後,純Pdワイヤーを肉盛溶接する方法は,溶接強度改善に有効な技法である.
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