研究目的:ADAMTS13(a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondintype 1 motifs 13)は止血機構に関与するvon Willebrand因子(VWF)を特異的に切断する酵素である。何らかの原因でADAMTS13活性が低下すると、血液中に過剰のVWFが蓄積して血小板凝集による血栓を起こしやすくなり、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP:thrombotic thrombocytopenic purpura)を発症することが知られている。ADAMTS13は肝臓の星細胞が特異的に産生することが知られていることに注目し、肝障害におけるADAMTS13活性の変動を検討し、その役割、意義を検討することを目的とした。 研究方法:ラットに胆管結紮を行い、胆汁うっ滞性肝障害を惹起し、血中ADAMTS13活性を測定し、肝障害レベルとの関係を調べた。 研究成果:ラット胆管結紮後4週まで経時的に肝臓の線維化が進展した。これに伴い、平滑筋αアクチン発現により確認した星細胞数は増加した。肝臓でのADAMTS13発現は平滑筋αアクチン発現に強く相関して、障害進展に伴い亢進することが確認された。血中ADAMTS13活性は、この肝臓での発現亢進に伴って上昇した。以上より、血中ADAMTS13活性は肝臓での星細胞による産生増加に規定されることが明らかとなった。血中ADAMTS13活性は星細胞の状態を知るための血中マーカーとして有用である可能性が考えられた。
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