研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、都市において緑地が提供する生態学的機能の解明を目的とする。これは新しくかつ重要なテーマであり、不明な点も多い。本研究では、都市緑地の昆虫が提供する2つの生態系サービスにどの関わっているかを明らかにするために、(1)分解過程の栄養循環と(2)受粉過程に注目する。さまざまな程度で都市化が進んだ緑地で、分解機能と受粉機能に関わる昆虫群を調べる。具体的には、都市化がこれらの2つの生態系サービスの機能にどう影響するか、緑地に生息する昆虫の種や系統の特性の変化と、生態系機能との関係解明を通して実証する。
都市景観における生態系機能を、とくに昆虫などの節足動物による基盤サービスに注目した研究をテーマとし、多数の既存文献をテキスト解析などの手法を用い、これまでに解明されている文献情報のメタ解析を行なうとともに、東京という世界最大規模の都市景観における森林を対象に、野外調査と実験を実施した。加えて、日本に暮らす一般の人々による昆虫やクモの生態系機能の認知程度や生物恐怖症の現状を大規模アンケート調査を実施した。文献情報のメタ解析研究の成果は、Ecosphere誌に掲載され、都市景観における様々な分類群の中で、昆虫が都市景観において分解者として重要であることを示した。解析にあたっては、topic modelling や taxonomic extractionなどのテキスト分析ツールを組み合わせて使用、他のレビュー手法と比較して、より客観的な解析に成功した。都市景観の森林における野外調査と実験では、東京大学本郷キャンパスおよび同小石川植物園を調査地とし、生ごみの除去や腐肉の分解に貢献する昆虫相を調べる実験を、2020年春から2021年夏にかけて行った。具体的には、2か所の調査地に設置した複数のトラップ地点で、生ゴミ(ビスケット、ソーセージ、米)と腐肉(異なるサイズのネズミの死骸)を置いたピットフォールトラップを用いて昆虫を収集した。加えた都市における照明の影響を調べるため、常設照明(明るいLED照明)を設置した場合と、証明がない場所を比較する実験も実施し、現在解析も終えて論文化を進めている。大規模アンケート調査については、100種類の無脊椎動物の画像を使ったオンラインアンケートを作成、日本に暮らす人々の生物に対する恐怖心やその他の態度、生態系保全への貢献に対する意識について質問し、5000通の返信を得ることができ、解析も終わり、論文化を進めている。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 10件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 6件)
Ecological processes associated with different animal taxa in urban environments.
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