研究課題
特別研究員奨励費
三宅島において比抵抗構造探査(MT探査)を実施し、現在の火山地下構造、特に、マグマや熱水などの火山性流体の空間分布の把握を行う。また、これまでに実施された比抵抗探査の結果と比較することで火山活動に伴う地下構造の時間変化を検出する。さらに、自然電位や火山ガス観測など多項目の観測結果や混相熱水流体シミュレーションの数値解析と統合することで、推定された地下構造との物理的・化学的整合性をとり、今後の時間発展および将来の火山噴火予測に資する研究を行う。
本研究では、前年度までに三宅島下の比抵抗構造と自然電位分布を明らかにした。R3年度は、熱水流動シミュレーションコードを使用した数値計算により、先述の既存の構造を説明できるかどうか、また、説明するように構造を修正することを試みた。熱水流動シミュレーションの結果、等方媒質の浸透率構造を仮定すると、島周囲の海から三宅島下への海水の浸透が顕著となり、比抵抗値に換算すると、MT法解析から得られた構造よりも圧倒的に低比抵抗となってしまい、両者が不整合になることがわかった。そのため、浸透率には異方性があることがわかり、海からの海水浸透を妨げるような層の存在が必要であることがわかった。加えて、ドローンを利用した空中磁気測量データの解析も実施した。当観測は、市販のドローン(DJI社Matrice600Pro)にセシウム光ポンピング磁力計(Geometrics社G-858)を搭載して実施したものである。その結果、平均磁化強度は12A/mとなり、玄武岩の標準的な強度範囲と一致した。また、山頂カルデラ火口周囲で平均よりも強磁化を示す一方で、カルデラ下は弱磁化を示した。このことは、カルデラ周囲は以前の噴火で未噴出だった火口内溶岩が固化し、磁化を獲得したものであり、カルデラ下は2000年噴火で粉砕され、磁化ベクトルの向きがランダムにかき乱されたため、全体として弱磁化を示したものと考えられる。また、当研究成果をとりまとめ、査読付き国際誌への投稿準備を行った。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 126 号: 6
10.1029/2021jb022034