研究課題
特別研究員奨励費
四季の存在する地域では動物たちは特定の季節にのみ繁殖活動を行なう。妊娠・孵卵期間の短い小型のハムスターやウズラは春に交尾を行う長日繁殖動物であり、妊娠期間が半年程度のヤギやヒツジは秋に交尾を行う短日繁殖動物であるが、繁殖時期の長日性、短日性を制御する仕組みはわかっていない。本研究では長日と短日でそれぞれ繁殖活動を行なうタイセイヨウニシンの野生集団間の全ゲノム比較で見出された候補遺伝子の機能をメダカを使って明らかにする。
CHEN博士はタイセイヨウニシンをモデルとして、春に産卵する長日繁殖の集団と、秋に産卵する短日繁殖の集団を用いて、集団遺伝学的解析を行うとともに、全ゲノム配列を比較したところ、繁殖の季節性を制御する候補遺伝子として、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)遺伝子を検出した。さらに詳細に検討したところ、TSHR遺伝子の上流領域の配列の違いが繁殖時期の短日性、長日性を制御していることが考えられた。受入れ研究者は従来の研究で鳥類、哺乳類、魚類の季節繁殖にTSHが重要な役割を果たしていることを明らかにしており、TSHRノックアウトメダカを作出した。タイセイヨウニシンの性成熟には何年もかかり、個体レベルでの機能解析が現実的ではないため、TSHRノックアウトメダカに、春と秋にそれぞれ産卵するタイセイヨウニシン集団由来のTSHRを導入した際に、繁殖時期に及ぼす影響を検討することとした。CHEN博士は最近メダカのゲノムにもう一つTSHRが存在することを見出したため、それら二つのTSHRの発現部位と発現量を明らかにするとともに、もう一つのTSHRについてもCRISPR-Cas9でノックアウトメダカを作出している。次に、TSHRノックアウトメダカにニシンTSHRを導入するために、Counter-Selection BAC modification kitを使って、ニシンのTSHRのBACクローンを作成した。TSHRノックアウトホモ型個体は不妊となることが考えられたため、ヘテロ型個体にニシンBACクローンをマイクロインジェクションして、現在表現型を検討している。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Endocrinology
巻: 161 号: 9 ページ: 1-8
10.1210/endocr/bqaa130
Proceedings of the National Academy of Sciences
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10.1073/pnas.2009925117