研究実績の概要 |
まずはプラスチック・ナノプラスチックの生体への影響に関する文献調査を行い、世界的な研究情勢の把握をしていただいた。あまり研究が進んでいない、より微細な直径1μm以下のプラスチック粒子「ナノプラスチック」に焦点を当てて文献調査を行い、その結果をまとめてレビューとして論文発表した(Bhagat et al., Sci Total Environ. 2020;728:138707.)。次にこれらプラスチック粒子とナノ粒子との相互作用について(Bhagat et al., J Hazard Mater. 2021;405:123913.)、特に医薬品としてもよく用いられているアゾール系化合物との相互作用(Bhagat et al., Chemosphere. 2020; 262:128335.)を文献調査し、その成果をレビューとして論文発表した。また新たなナノプラスチック評価系として、線虫の可能性についても文献調査を行い、その成果をレビューとして発表した(Bhagat et al., Trends Analyt Chem, 2021;138:116235)。 実際の実験研究としては、まず前述のアゾール系化合物のうち、医薬品として使用が世界的にも多いケトコナゾールとフルコナゾールの2つと、ナノプラスチックの相乗的な毒性発現メカニズムについて、ゼブラフィッシュを用いて試験した。その結果、これらの化学物質をナノプラスチックと同時に摂取する場合、化学物質単体で摂取する場合より活性酸素量の増加と脂質過酸化反応が亢進し、アポトーシスを中心とした関連遺伝子発現が増加毒性が増加することが明らかとなった(Bhagat et al., Sci Total Environ. 2021;800:149463.)。またその際、薬物トランスポーターもナノプラスチックの毒性発現に大きく関与していることに気付き、ナノプラスチックによる金属ナノ粒子の毒性増強メカニズムを明らかにした(Bhagat et al., Sci Total Environ. 2022;835:155436)。
|