本研究は中米コロンビアの17歳の少女が麻薬カルテルの駒となって、コカインを飲み込みNYに不法入国する表象を分析した。現代の米国にとって中南米不法移民は大きな社会問題であるが、貧しい中米諸国の労働者階級にとっては米国へ渡ることこそ最後の砦ある。事実に基づいた不法移民を描く映画作品は少なく、また、麻薬密輸に手を染める中米少女の決断の背景にいかなる問題があるのか、そしてどのように決断するのかについて考察できる作品は皆無と言って良い。そして、その表象を中南米文化の根幹を形成したともいえるカトリック信仰と思想の観点から分析した研究は非常に少なく、その意味でもこの研究は大いに意義あるものとなったと言える。
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