研究成果の概要 |
膠原線維染色のひとつであるマッソン・トリクローム染色の染色工程には媒染剤を必要とする。本研究では, 人体や環境に配慮した最適な代替媒染剤について検討を行ったところ, 市販媒染剤(渡辺媒染剤), ブアン液, 飽和ピクリン酸水溶液, ピクリン酸水溶液, 脱灰液A(迅速脱灰液)について良好な染色結果が得られた。さらに, これら5種類の媒染条件下の染色態度について画像解析ソフトを用いてRGB/Br(色の数値化)解析を行ったところ, ブアン液と飽和ピクリン酸水溶液の2種類はその他の媒染剤と比較してコントラストが良好であることがわかった。この結果から, 飽和ピクリン酸水溶液が代替媒染剤としてもっとも適していると考えられた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
クロム酸を用いた媒染剤は毒性が強くケミカルハザードが懸念されるため, これに替わる媒染剤の検討は重要な課題である。今回, マッソン・トリクローム染色の代替媒染剤について検討したところ, 飽和ピクリン酸水溶液を用いることで良好な染色態度が得られることがわかった。重クロム酸に含まれる六価クロムは, 発がん性物質として扱われていることやその土壌汚染は公害としても問題となっているが, ピクリン酸についてはこれまでにそのような報告例はない。マッソン・トリクローム染色において代替媒染剤に飽和ピクリン酸水溶液を使用することは人体や環境へ配慮した有効な手法であると考えられる。
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