研究成果の概要 |
近年の情報通信技術の革新に伴い, 色彩情報をいとも簡単に交換可能なモバイル端末が個人間に急速に普及した. 色を用いた情報伝達の機会が飛躍的に増えているのは色彩情報の重要性の証である. 色を用いた情報伝達機会の増加は, 従来は目立たなかった「色覚の個人差の影響」が, 人々の間の情報相互理解に重大な悪影響を与える可能性があること示唆する. したがって, 色知覚の違いについての正しい認識と適切な配慮が必要である. そこで, 本研究は, 以前我々が色覚の個人差について多次元尺度構成法(MDS)を用いて調査し, 色覚の個人差が知覚的に連続であること示した結果を基に、個人の色空間把握を目的として自己分析ツールを開発した.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
色覚の異なる人々がお互いの色の見え方を理解することは非常に重要である. 日本眼科医会の調査の結果では, 色覚異常と診断された人の約半数が自身の色覚異常を「気づいていなかった」と回答している. 自覚が無い中高生の割合も多く, 進学や就職に向き合う際のトラブルも懸念されている. したがって, プライバシーへの配慮と同時に, 早い時期に自らの色の見え方を知っておくことは非常に重要であり, 本人のみならず保護者や学校の教師等が色覚の多様性を正しく理解することも肝要である. そこで, 本研究では色空間把握を目的として手軽に利用できる自己分析ツールを開発し, 広く一般に公開することで色覚の多様性の理解につなげる.
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