研究課題/領域番号 |
19H00532
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
幕内 充 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 研究室長 (70334232)
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研究分担者 |
小川 誠二 東北福祉大学, その他, 名誉教授 (00358813)
小泉 政利 東北大学, 文学研究科, 教授 (10275597)
伊藤 和之 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 教授 (10501091)
木山 幸子 東北大学, 文学研究科, 准教授 (10612509)
和田 真 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 研究室長 (20407331)
成 烈完 東北福祉大学, 感性福祉研究所, 准教授 (30358816)
中村 仁洋 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 主任研究官 (40359633)
遠藤 喜雄 神田外語大学, 言語科学研究科, 教授 (50203675)
Jeong Hyeonjeong 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (60549054)
那須川 訓也 東北学院大学, 文学部, 教授 (80254811)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,980千円 (直接経費: 34,600千円、間接経費: 10,380千円)
2023年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2021年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2020年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2019年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 自閉症 / 終助詞 / 語用論 / 共感 / 脳 / 日本語 / 発達障害 / カートグラフィー / fMRI / コミュニケーション / 自閉スペクトラム障害 / 言語 / 文末助詞 / 社会性 / 自閉症スペクトラム / MRS / rsfMRI / 心の理論 / ASD |
研究開始時の研究の概要 |
日本語の文末助詞(ね、よ等)には、言語における対人コミュニケーション情報が集中的に出現する。例えばたった一文字の違いである「いいね」と「いいよ」は、適切に使用しないと問題となりえる。これに対応するかのように自閉症者は文末助詞(特に「ね」)をあまり使用しないことが知られている。本研究では終助詞が社会的な情報を生み出す脳メカニズムを検討し、自閉症者の言語運用上の問題の支援に繋がる知見を見出す。
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研究実績の概要 |
本研究は、自閉スペクトラム症の言語障害を言語学理論<カートグラフィー>で捕捉し、有効なリハビリテーション手法を創出するための基盤となる科学的根拠を提供することを目的とする。文には「誰が誰に何をした」という命題を表す階層があり、その上にその命題を他者にどう伝えるかという情動(態度・価値判断など)を表明する文末助詞(か、ね、よ、さ等)の階層があるが、そこに対人コミュニケーションの諸相が集中的に出現すると予想される。 理論言語学班の遠藤はカートグラフィーの概念を用いて日本語終助詞について研究を進め、性質を数値化するなどの試みを発表した。 認知神経科学実験班では情動的情報が終助詞の階層で統語演算によって生成されるという仮説を認知神経科学的に検討するため、終助詞の処理、終助詞と似た統語位置に生起する絵文字の処理、終助詞と同じCP階層に現れる副詞の処理に関するfMRI実験を行い、解析・論文投稿準備中である。 行動実験班では終助詞の音韻論的性質について検討し、自閉傾向と相関する特徴を見出した。また、自閉症者の聴覚特性について検討し、選択的聴取の問題が特に顕著であることを見出した。実験により音源定位に問題があることが示唆された。 令和4年8月11,12日に東北大学に於いて公開シンポジウム「自閉スペクトラム症(ASD)における言語と共感」を開催し、当プロジェクトの研究者に加え外部からも講師を呼び240名を超える参加を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論言語学:情動の計算のメカニズムについて、ASDの言葉との関連を探った。特に、文末助詞の性質を数値化し、研究集会で発表した(遠藤)。 実験:日本語の終助詞「ね」と「よ」を定型発達の母語話者が理解している間の神経基盤を検討する2件のfMRI実験し、感情的共感に関わるセイリエンスネットワークの領域の役割が示唆された。また定型発達者による両終助詞のプロソディーを確かめるための音声産出実験を行い、終助詞の長さや強さの個人差を検討した。(木山・那須川)。副詞処理のfMRI実験を行い、論文を執筆中(小泉)。発達障害のある人の感覚の困りごとを調査し、日常生活で最も困っているのは、聴覚の問題が半数以上を占めることを見出した。成果を2報の論文として公表した。実験室実験の結果、音源定位における特徴など多様な聴覚特性が示唆された(和田)。文理解における文末助詞と絵文字の役割とその神経基盤について、行動指標とfMRIを用いて比較検討を進めている。fMRIでは、終助詞と絵文字の比較で、左聴覚野などで神経活動の差が観察された(中村)。 安静時fMRIにより赤核(red nucleus)と大脳機能野間の機能ネットワークから対人反応性指標及び音楽訓練期間との相関のあるの部位が見つかった。・安静時fMRI信号から心拍、呼吸由来の生理信号の除去を行い、一部の機能ネットワークで繰り返し精度が向上されることを確認できた。・メタ分析により得られたASD関連脳部位からなるASD機能ネットワーク上でASDを疑う被検者の脳機能データを評価した。・俳句により励起される感情などの脳活動計測のための実験を行った(成・小川)。 調査:理療教育(鍼灸マッサージ師養成)を履修している成人の中途視覚障害者が行う医療面接演習場面の分析から、コミュニケーション行動上の特徴を抽出する方法の検討を図った(伊藤)。
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今後の研究の推進方策 |
情動の計算のメカニズムについて計算数値化したものを元に、三次元のカートグラフィー統語構造地図を新たに作成し、出版する予定(Oxford University Press) (遠藤)。文に対する共感の程度に応じた脳活動を示す領域を探索する(幕内)。昨年度までに行った実験の知見をまとめ、論文化する。また、日本語の終助詞の理解過程を検証する脳波実験(Kiyama, et al., 2018)のパラダイムを利用し、中国語の語気助詞の脳波実験を実施する(木山)。副詞MRI論文を今年度のできるだけ早い時期に投稿する(小泉)。実験室実験を進め、ASDのある人の聴覚特性を明らかにしていく(和田)。fMRI 画像データの収集と解析を継続し、必要なサンプル数を確保したうえで暫定的な解析結果をまとめて年度末までに国際学会などでの成果発表を目指す(中村)。俳句関連データ分析を行う。前年度の研究で同定された中脳―大脳ネットワーク上での俳句刺激による反応を調べる(成・小川)。異動先の鍼灸学専攻の医療面接に関する演習において、初学である学生(視覚障害者)の発話行動の変化の過程において言語的特徴の抽出が可能かの検討を試みる(伊藤)。
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