研究課題/領域番号 |
19H00536
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊地 大樹 東京大学, 史料編纂所, 教授 (80272508)
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研究分担者 |
七海 雅人 東北学院大学, 文学部, 教授 (00405888)
井上 聡 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (20302656)
佐藤 亜聖 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (40321947)
上椙 英之 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (50600409)
榎本 渉 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (60361630)
高橋 敏子 東京大学, 史料編纂所, 教授 (80151520)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,630千円 (直接経費: 35,100千円、間接経費: 10,530千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2022年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
2021年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2020年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2019年度: 15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
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キーワード | 金石文 / 拓本 / 歴史叙述 / マテリアルカルチャー / 歴史地理情報 / 板碑 / 町石 / ひかり拓本 |
研究開始時の研究の概要 |
金石文拓本を結節点としながら、デジタル技術に即した金石文史料の研究資源高度化および歴史叙述への応用を、国際的日本学研究を意識しながら模索する。選択集中的なフィールドを設定し、紙拓本と光拓本技術の複合的活用により金石文調査を進める。並行して優良な金石文拓本史料群を選定し、調査・デジタル化を進める。これらのデジタルデータを活用できる金石文研究データベースを連携開発し、調査・整理・公開のプロセスを確立する。以上の成果を、歴史学と隣接する多分野との学融合的連携関係を重視しながら活用し、歴史叙述への応用の方法を探る。マテリアル・カルチャー研究とモノ史料研究のリンクにより、研究成果を国際発信してゆく。
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研究実績の概要 |
COVID-19感染拡大状況が落ち着く状況が増えていたことから、研究計画の遂行がある程度見込める状況となった。まず年度初めにオンライン会議により、参加者相互の連携体制を確認し、全体計画のもと班単位を中心とした具体的計画を相談した。①東日本班は、引き続き宮城県石巻市教育委員会と連携し、同市博物館において企画展を共催した。準備の過程で多くの自治体史編纂関連資料を発見し、また市域内の板碑所在確認調査も実施した。企画展では、とくに関連企画でひかり拓本の実演、調査に関するシンポジウムを実施し、広く市民に研究成果を還元した。同市保管の東日本大震災被災レスキュー資料中の『石巻の歴史』編纂資料のブローニー版については、すべてのデジタル化を完了した。②西日本班は、引き続き高野山町石研究会との協力により高野山町石調査を実施、すべての町石の正面の拓本採集を完了した。高野町と協力して成果報告会を開催し、広く市民に研究成果を還元した。③デジタル技術・DB技術開発班は、史料編纂所所蔵整理済拓本すべてのデジタル化を達成するとともに、あらたに高野山町石拓本のスキャニングを試みた。上椙英之はひかり拓本技術の実用化を進め、引き続き各班のフィールドワークに帯同してデジタルデータを収集した。金石文拓本データベースの抜本的改良を完了し、あらたなシステムを完成させた。④歴史地理情報研究班は新データベースに連動し、歴史地理情報の搭載についての研究に着手した。⑤歴史叙述・国際日本学研究班は、Reischauer Institute of Japanese Studies, Harvard Universityにおいて開催された学会に参加、英語による研究発表を行い国際的な成果公開を促進した。⑤その他、書籍購入・史料写真デジタル化・拓本装備等によって研究推進の基盤整備を進めるとともに、各メンバーが論文執筆・研究発表等によって成果を発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、過去3年間の調査研究成果の蓄積についての公開、市民への還元を意識し、当初の研究計画を効率的に進めることができた。東日本班では、宮城県石巻市博物館において企画展「石巻の板碑」を共催する過程で、同市内の板碑確認調査がやや進捗し、またあらたに過去の自治体史編纂資料の発見に至った。『石巻の歴史』編纂資料デジタル化もすべて完了し、来年度以降の活用および成果還元の見通しが立った。西日本班はフィールド調査を積極的に進め、高野山町石正面のすべての拓本調査を完了したことは画期的であり、最終年度に側面等の拓本採集に注力できる前提を形成した。さらに、高野町と協力して報告会を実施、市民に成果還元できたことはおおきな成果であった。デジタル班は、東京大学史料編纂所1999年以前収蔵金石文拓本のデジタル化を完了した。あわせて、金石文拓本データベースの抜本的改良も完了し、最終年度に新たなデジタルデータの搭載を待つのみとなった。また、外部業者との共同により高野山拓本のスキャニング方法を検討し、実施した。ひかり拓本技術については、一般市民から文化財関係者まで幅広く利用できるよう実用化を進め、企画展「石巻の板碑」関連企画としてワークショップを行い、実証実験および成果還元を実施した。また、デジタル化の前提となる拓本裏打作業について、史料編纂所修補室の指導のもと、同室と外部業者および研究所内プロジェクトとの共同で収集拓本の装備を着実に進めた。歴史地理情報班は、他の研究グループとの連携等により、あらたな金石文データベースに即した歴史地理情報システムの高度化と実装について検討を開始した。国際班は、海外との往来が再開したことを受け、アメリカ・ハーバード大学において国際的な研究成果発信を行ったことは画期的であった。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19感染拡大状況が徐々に落ち着いてきたことを受けて、当初の研究計画どおりに実施の見込みが立てやすくなった。最終年度に当たり、残りの課題を確実に遂行できるよう計画を進め、さらに成果還元を加速したい。とくに対面方式による活発な研究交流を復活していきたい。年度初めの研究打ち合わせは引き続き実施し、相互に情報や個別の研究計画を共有することにより、効率的・機能的に研究課題を進展させ、できれば研究代表者・分担者が会した研究集会を開催し、成果を総括したい。菊地大樹は外部の研究者の協力を得て国際研究集会に参加報告することができた。この関係を継続的に発展させ、金石文からもう一度文献資料まで含めたマテリアル・カルチャー研究に深くリンクし、次なる研究課題の発見・展開を準備していきたい。いっぽうで、宮城県石巻市・和歌山県高野町と共同して研究集会を行ったことは、市民への成果還元として意義深く、最終年度もこの点を意識して可能性を探る。とくに石巻市では、企画展の準備があらたな資料の確認・発見につながり、次なる課題を見通した調査の準備も進めたい。フィールド調査については、とくに高野山町石について佐藤亜聖が他のプロジェクトと共同して実測図を完成させ、報告書を刊行した。拓本・光拓本調査も今年度中には完了の見込みであり、データベースや総合的な学術報告書刊行を検討し、成果の発信に努めたい。拓本デジタル化についても計画通り完了しており、最後にデータベースへの登録公開までを着実に行い、さらにその活用法について検討しながら次なる課題につなげたい。次年度もCOVID-19が完全に終息するわけではないと予想される。さまざまな面で所期の研究計画が遂行できるよう、引き続き柔軟な予算執行が可能となる情報収集を進め、研究を完遂するよう努めていきたい。
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