研究課題/領域番号 |
19H00542
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
宇田津 徹朗 宮崎大学, 農学部, 教授 (00253807)
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研究分担者 |
田中 克典 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00450213)
福嶋 紀子 松本大学, 基礎教育センター, 講師 (10601304)
山崎 正夫 宮崎大学, 農学部, 教授 (80381060)
石川 隆二 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (90202978)
上條 信彦 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (90534040)
田崎 博之 愛媛大学, 埋蔵文化財調査室, 研究員 (30155064)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,850千円 (直接経費: 34,500千円、間接経費: 10,350千円)
2023年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2022年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2021年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2020年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2019年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | プラント・オパール分析 / DNA分析 / 稲作史 / 農業史 / プラント・オパール |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、稲作の存否や水田や畑(畠)といった生産遺構の探査に利用されてきたイネのプラント・オパール中の遺伝情報を抽出する技術を用いて、稲作史研究の進展を制約してきた「時間と空間を網羅したイネ情報の体系的な蓄積」を克服する研究手法の構築を目指す。 具体的には、「日本の主要な時代と地域のイネの遺伝情報の収集と分析」と「考古学・歴史学・農学における稲作史研究の成果との連携ならびに相互補完の枠組み作り」の2つの取組を両輪として研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、稲作の存否や水田など生産遺構の探査に利用されてきたイネのプラント・オパール中の遺伝情報により「時間と空間を網羅したイネ情報の体系的な蓄積」を可能とする研究手法の構築を目指している。2022年度の取組と実績は以下のとおりである。 【取組1:国内遺跡を対象としたイネや栽培に関するデータの収集と分析】板付遺跡など国内遺跡からの試料採取、採集済試料のプラント・オパールについて形状解析、DNA分析を実施した。垂柳遺跡出土イネの解析と石器分析の結果に基づき、同遺跡で弥生時代の諸条件に近づけた復元水田での耕作実験を行い、栽培技術の比較検討や収量の試算を行った。九州の出土イネの形質データおよび対馬などの在来品種の栽培環境に関するデータを収集した。 【取組2:プラント・オパールからの遺伝情報の収集と分析確度の検討】弥生時代を含む水田土壌から抽出されたイネプラント・オパールに内包するDNAを分析した。葉緑体ゲノム領域と核ゲノム領域の解析では、連続層序の試料において、生態型や大まかな系譜復元ができることがわかった。 【取組3:日本で栽培履歴のある赤米の遺伝的解析】大唐米(インド型)と赤米(日本型)の葉緑体ゲノムの比較データを作成し、中部日本の在来種と中世に渡来した大唐米を識別マーカーから比較検証した。結果、大唐米はインド型であること、一部に葉緑体が日本型に置換した系統が存在することを見出した。 【取組4:大唐米ならびに赤米系品種等の作付け状況の調査検討】兵庫県相生市資料館、新潟県立文書館、兵庫県たつの市教育委員会、九州歴史博物館、長野県立歴史館、松本市文書館、大分県立先哲史料館、国文学研究資料館、埼玉県立文書館で、各地域に残された近世の名主家文書から、年貢関係史料と村明細帳、留書類などの調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度もコロナ禍の影響が大きく、フィールド調査等が制限されることとなったが、研究ネットワークと自治体発掘担当者の協力により、板付遺跡など重要な遺跡について新規試料の収集を実施することができた。 また、考古学、歴史学、農学の各分野の検討資料の収集についても、ほぼ予定通りに進展している。4年目に予定していた成果公開についても、関係学会でワークショップを実施し、関係する研究者等との検討や意見交換を行うことができた。 以上の状況から、今年度は、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍で実施が延期された内容を含め、以下の取組を実施し、研究のとりまとめと成果発表を行いたい。 取組1:国内遺跡を対象にイネの遺伝情報の収集と分析を実施し、収集可能な遺伝情報の実態の解明を推進する。コロナ禍で着手できなかった佐賀平野での調査(大唐米が普及し、栽培イネが亜種レベルで変化した佐賀平野について、文献・近世文書の調査と現地自治体との交渉を行い、調査遺跡の選定ならびに分析試料の採取)を実施したい。また、ブロックサンプルした土壌の微細構造を観察し、より実用的かつ効果的な試料採取箇所の検討を進め、試料採取からプラント・オパール抽出までの分析手法のブラッシュアップにも取り組む。なお、分析が終了した遺跡土壌は、保管整理を進め、研究代表者の所属する大学博物館に収蔵し、今後の分析ニーズに対応できるようにする。 取組2: 昨年度の実績(連続層序の試料において生態型や大まかなイネの系譜が復元できる)に基づき、現代のイネと接点がある系譜を明らかにし、歴史学ならびに農学からの検証を試みる。また、これまでの分析結果を総括し、プラント・オパールのDNA分析の有効性と実用性を検証する。 取組3:大唐米(インド型)と赤米(日本型)の完全長葉緑体ゲノムの構築:比較ゲノム配列による識別可能なDNA領域を特定することで遺物にも応用できるマーカーを開発する。また、歴史文献に記載されているイネの特徴を赤米(日本のコアコレクション:大唐米、インド型)と長野の赤米(日本型:遺伝資源として収集解析が進行中)を対象に、外観やゲノムなどから絞り込みを行い、データ化する。 取組4:これまでの文献調査で明らかとなった農学および考古学と相互検証可能な、栽培イネの変化や変遷(新規品種の導入や変更)によって生じたイネの形質や栽培技術の変化に関する情報のとりまとめや大唐米や赤米以外の同様の歴史記録についての探索も進める。
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