研究課題/領域番号 |
19H00557
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分4:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
水野 一晴 京都大学, 文学研究科, 教授 (10293929)
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研究分担者 |
森島 済 日本大学, 文理学部, 教授 (10239650)
手代木 功基 摂南大学, 外国語学部, 講師 (10635080)
孫 暁剛 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (20402753)
奈良間 千之 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50462205)
荒木 美奈子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (60303880)
中辻 享 甲南大学, 文学部, 教授 (60431649)
山縣 耕太郎 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (80239855)
大谷 侑也 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (10964231)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
44,720千円 (直接経費: 34,400千円、間接経費: 10,320千円)
2022年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2021年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2020年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
2019年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | 環境変動 / 植生遷移 / 水環境 / 氷河 / 地域社会 / 気候変動 / 自然環境 / 植生 |
研究開始時の研究の概要 |
温暖化の影響でアフリカの高山の氷河は急速に縮小し、10-20年後にはすべての氷河が消滅すると予測されている。氷河が縮小・消滅すれば、周辺の動・植物の生態系や水資源などに、さまざまな影響が生じ、それによって山麓の地域社会にも、水環境や農業、観光業などで大きな影響が生じることが予想される。本研究課題では、キリマンジャロで調査をし、これまで調査したケニア山のデータとあわせて、アフリカの高山における氷河の縮小・消滅が自然や生態系に及ぼす影響を地形学や気候学、生態学などから調査をし、それらの複合的なメカニズムを明らかにする。そして、さらに地域社会に与える影響を人文地理学や人類学などの観点から検討する。
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研究実績の概要 |
ケニア山でセスナ空撮を行い、連続画像からSfMソフトを用いてルイス氷河の地形モデルを作成した。2019年の地形モデルと比較したところ、年間2mほどの表面低下が確認された。また、ルイス氷河に4本のステーク(全長4.5m)を設置し、ステーク先端にアンテナを付けGNSS測量を実施した。今年度再測することで氷河の流動の有無が明らかになる。 ケニア山の標高約3000m~4700mの5地点において、5㎝間隔で深度別の地温を測定した。地温は深度30~40㎝で一定となり、その温度は標高とともに低下するが、すべての地点で0℃を超えた。このことから、ケニア山においては永久凍土がすでに消失していることが予想された。 標高約4,200m地点の3個体のジャイアント・セネシオの最も新しい葉が付いている樹頂点から最も古い根元まで、10cm毎に枯葉を計100サンプル採取した。3個体の枯葉中δ13Cは-22‰~-29‰の間で推移し、樹頂点からの距離が近くなるほど減少する傾向が見られた。植物中のδ13Cは値が高いほど乾燥ストレスが大きいと解釈できるため、本地域の高山帯では過去~現在にかけて乾燥ストレスが低くなっている、つまり土壌水分が増加している可能性が示唆された。 ケニア山の山麓は2021年から続いた旱魃の影響で農業は大きなダメージを受けた。とくに2022年3月~5月の大雨季に雨がほとんど降らなかったため、作付した主食のトウモロコシが立ち枯れて全く収穫できなかった。農民の多くは町の店でつけ買いをしたり、日雇い労働で得た現金で食糧を購入し生活を維持していた。ケニア山から流れてくる河川も枯れ、生活用水も大きな問題となった。コロナ禍の影響で観光客が激減し、ガイドやポーターで副次的な収入を得ていた山麓農民たちの家計経済はダメージを受けた。ロシアによるウクライナの侵攻によってトウモロコシの値段は2.5倍に上がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響で2020年度と2021年度は調査できなかったが、2022年度は代表者と分担者の計5名がケニア山で現地調査を行うことができた。ただ、大学によってはまだ海外渡航を認めないところもあって、分担者の全員が調査を行うことができなかった。 3年ぶりの調査であったため、気象観測のためのデータロガーの電池切れで回収できなかったデータもあったが、回収できたデータによっておおむね分析ができた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響がほとんどなくなれば、分担者の全員が現地調査に入り、データが不十分だった部分を補うべく調査を実施することができると考えている。5月に行う予定の科研のミーティングにおいて、分担者・協力者を交えて今後の研究計画を十分に議論するつもりである。 また、昨年度は訪問できなかったキリマンジャロにおいてもセスナからの空撮を行い、氷河の変動を観測する予定である。
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